花粉症の根本治療薬、シダトレン スギ花粉舌下液のまとめ

花粉症に関しては、基本的に根治の方法というのはほとんどなく、第二世代抗ヒスタミン薬と
ステロイド点鼻薬により、一時的に症状を和らげる対症療法というのが主流となっている。
花粉症を根治させる可能性のある唯一の方法は、希釈したアレルゲンを体内に摂取し続け、
徐々に体のアレルギー反応を抑制していく減感作療法(アレルゲン免疫療法)である。

減感作療法(アレルゲン免疫療法)には、アレルゲンを注射する皮下減感作療法と
舌下にアレルゲンを数分置く舌下減感作療法の2種類があり、シダトレン スギ花粉舌下液は、
スギ花粉を用いた舌下減感作療法のための薬である。2014年10月8日に保険適用で、
鳥居薬品から発売された。

なお、減感作療法(アレルゲン免疫療法)は、民間療法の類ではなく、偽の薬と比較をして、
改善効果が明らかに高いことが確認された方法である。 シダトレン スギ花粉舌下液に
関しては、所定の講習を受講したアレルギー専門医のみ処方ができる薬である。

なお、この薬、やるとなったら3年以上、一日もかかさず毎日服用し続けなければならないので
相当に面倒くさい方法である。基本的にはやめておいたほうがいい。挫折して時間とお金を
無駄にするのが関の山だ。この点に関しては最初に強調しておこう。


さて、このページでは、シダトレン スギ花粉舌下液に関して情報をまとめていこうと思う。
かなり広範囲に情報を調べてページが長くなってしまったので、需要が高いと思われる
情報に関しては、最初にまとめておき、あとで詳細なソースを示そうと思う。



シダトレン スギ花粉舌下液に関するまとめ

詳細なソースは後で示すとして、ここでは特に有用なシダトレンに関する情報を簡潔にまとめる。

・舌下減感作療法は、最低2年以上毎日、1日も欠かさず薬を服用し続けなければならない非常に患者の負担の大きい方法である。東京都福祉保健局実施の研究ですら、2年間継続できた人は70%しかいない
・2年間続けられた人でも、完治、もしくは大幅な症状改善に至ったのは4割程度で3割は効果が無い
・つまり10人中3人は大幅に改善するが、2人には効果がなく、3人は途中で挫折する
・シダトレンは民間療法ではなく、薬効が立証された処方薬。病院でしか処方することはできない
・どの病院でも処方できる薬ではなく、所定の講習を受けたアレルギー専門医に限って処方ができる
・治療を開始できるのは5,6月から12月まで。花粉症シーズンに治療を開始することはできない
・治療ができるのは12歳以上、65歳未満の人。妊婦や重度喘息患者、HIVなどの免疫疾患患者も不可
・花粉症の薬との併用は、基本可能だが、全身性ステロイド薬(セレスタミン、プレドニンなど)は不可
・シダトレン スギ花粉舌下液はスギ花粉症にしか効果が無い。ハウスダストなど他のアレルギーには効かない
・初回の診療では薬をもらうことはできない。まず、スギ花粉症であることを確認するための血液検査を行う
・その後翌週に薬を処方され、2週間毎に2週間分の薬をもらうというのが治療の流れ
・かかる費用は、保険適用で年間45000円程度。初回血液検査で3000円~5000円、その後の診療・薬の処方で1500円程度が2週おきにかかる計算(複数の経験者の実績ベース)
・アレルゲン免疫療法で一番怖い副作用はアナフィラキシーというアレルギーによる蕁麻疹、嘔吐、発作などの症状
・かつて健康食品のスギ花粉カプセルを飲んだ女性が意識不明の重体に陥った事例あり。その後スギ花粉を主成分としたエキス、カプセル、錠剤などは薬事法の対象となり販売禁止になった
・減感作療法(アレルゲン免疫療法)には舌下免疫療法と注射による皮下免疫療法の2種類がある
・舌下免疫療法は皮下免疫療法と比べて深刻なアナフィラキシーが発生する可能性が低く安全性が高い
・効果の高さは皮下免疫療法>=舌下免疫療法で、注射のほうが効果が高いというデータと同等程度というデータがある

なお、実施病院の一覧に関しては、東京だけは下記に手作業でリストとしてまとめた。
シダトレンを使った舌下減感作療法を受けられる東京の病院一覧


シダトレンを使った舌下減感作療法(舌下免疫療法)の実際の流れと費用

シダトレン スギ花粉舌下液を使った減感作療法の流れや費用に関しては、医療関係者の
ページだと推測値が多いので、実際に患者として診察を受けた人の情報のほうが正確だ。
人によって、検査料金がちょっと違ったり、初期に通う回数が異なったりするようなので、
舌下減感作療法を体験した方複数人の内容をまとめたモデルケースを最初に記載しておく。

・モデルケース
【初診時】
舌下免疫療法の説明とスギ花粉症の血液検査。薬の処方はなし。
費用は初診・検査料が約3000円~5000円
↓1週間後
【2回目】
血液検査の結果連絡と、シダトレン1-7日用(青いボトル)、8-14日用(白いボトル)の処方。
2週目の薬は1週目の10倍の濃度。この増量期は1~2日ごとに薬の用量が増えていく。
費用は診察料約600円+薬代約900円の計1500円程度
↓2週間後
【3回目】
維持期用のシダトレン2週間分が処方される。濃度は8-14日用のものと同じだが、
ボトルではなく1回毎に定量使いきりのパックになっている。
費用は診察料約600円+薬代約900円の計1500円程度。以降は2週間毎にこれが繰り返される。

・モデルケースでの費用計算
1年間は52週。上記モデルケースにより、つまり2週間毎に診察料+薬代で約1500円がかかる
という計算になるので、1,500円x27=40,500円。これにこれに検査料3000円~5000円程度
初回や1年毎にかかると仮定すると、舌下免疫療法の費用は保険適用で1年辺り45,000円程度
というのが相場ということになる。


下記、実際に舌下減感作療法(舌下免疫療法)を受けた方の記事をいくつか載せておく。
費用はどこで受けても全く同じというわけではなく、若干幅があるようだ。

特に初回の血液検査の値段は2000円台のところから6000円近くするところまで幅がある。
また、上記モデルケースでは、2回目の通院時に、増量期の薬に関して1週目の1-7日用と
2週目の8-14日用の計2週間分を1度に処方するケースで計算をしたが、これを1週ごとに
分けて処方する医者もあるようだ。その辺個別差があることは、各体験者の記事をご確認
いただければと思う。


チャレンジ!舌下免疫療法「第1回診療:誰でも受診できるわけではない。」
チャレンジ!舌下免疫療法「第2回診療:無事に治療受ける資格get!」
チャレンジ!舌下免疫療法「第3回診療:ここからはルーチンでございます。」
チャレンジ!舌下免疫療法「第4回診療:やはり拘束時間はそれなりです。」
チャレンジ!舌下免疫療法「第5回診療:クリスマス・イブが関係しているのか」
この人は毎回のかかった費用を10円単位まで正確に記載していて、 かつ、値段の変化が
なくなる3回目まで全部記載しているので非常にわかりやすいと思う。以下まとめ。
・1回目はスギアレルギーであることを確認するための血液採取。5930円
・薬を飲む前後2時間は運動、飲酒は禁止
・効果があるのはスギ花粉症のみ
・シダトレンは甘いシロップのようだった
・薬は要冷蔵
・2回目の費用は診察料580円+薬代900円の合計1480円。増量期の薬を2週分処方。
・3回目以降の費用は診察料580円+薬代1020円の合計1600円。以降は2週間毎に通院

オレンヂ「保険適用になったスギ花粉症の舌下免疫療法をはじめてみました」
オレンヂ「スギ花粉症の舌下免疫治療薬「シダトレン」の服用は維持期に入りました」
昭和5年開業の木造平屋の耳鼻咽喉科で舌下免疫療法を開始。血液検査が非常に安いケース。
・初回は舌下免疫療法の説明と血液検査。診察代2300円
・1週間後の2回目は1週目用の青い容器と2週目用の白い容器のシダトレン計2週分処方。
・2回目の診察料は420円、薬代は840円で計1260円。
・アナフィラキシーのリスクがあるので、絶対に一人の時に処方してはいけないと釘を刺される
・薬は甘くて苦い味
・3回目の診察料は580円、薬代は960円で計1540円

yukikoの部屋「シダトレン 花粉症舌下免疫療法はじめました」
yukikoの部屋「シダトレン スギ花粉症舌下免疫療法 2週目」
yukikoの部屋「シダトレン スギ花粉症舌下免疫療法 3週目」
この方は以前に血液検査をしていたので、初回から投薬が開始されたケース。
ただ、初回に1-7日用の1週間分が処方され、1週間後8-14日用の1週間分が処方される
というパターンになっている。 この辺、医者によって初回処方時に1週分だけ出すのか、
2週分一気に出してしまうのか、方針が異なるようだ。以下、内容まとめ。
・かかりつけの耳鼻科医に注射による皮下減感作療法をやりたいと言ったら「あれは危険だから絶対ダメ」と言われた。原液を注射するので危険性が高いらしい
・舌下減感作療法を始める際に、医者から「2年間続けるという覚悟と強い意志がありますか?」と聞かれるとのこと
・症状がなくても2年以上、毎日シダトレンを飲まなければならないので、かなりの根気が必要
・最初に1-7日用のシダトレンを舌下にシュッとして、待合室で30分様子を見ながら口腔の腫れがないか、かゆみ、だるさがないかなどを確認
・シダトレンをシュッとしてから2分間は飲み込まないようにして、その後飲み込む。その後5分間はうがい、飲食不可
・最初の1-7日用のボトルは1週間の薬なので、次回は1週間後に通院
・2週目は8-14日用のボトルを使用。スギ花粉エキスの濃度は1-7日用の10倍
・2回目の費用は病院代が530円、薬局代が420円の計950円
・3週目からは2週目とシダトレン濃度は同じだが、使い切りタイプのものを使用
・3週目からはずっと同じ薬を2週間ごとにもらうという流れ
・3週目の費用は病院代が980円、薬局代が890円の計1870円。ただしこの人のこの回は、別途耳掃除代が含まれている

可能性のタネ「保険適用になったので、スギ花粉・舌下減感作療法(舌下免疫療法)を始めた」
可能性のタネ「シダトレンに含まれる花粉の量ってどれくらい? スギ花粉舌下減感作療法(舌下免疫療法)」
可能性のタネ「スギ花粉舌下減感作療法(舌下免疫療法)3週目突入」
この方は眼科でシダトレンの舌下免疫療法を始めたとのこと
・通院1回目。 舌下減感作療法の説明とアレルギー検査。診察料4810円。
・通院2回目。シダトレン投薬後30分院内で様子見。診察料580円。薬代800円。
・2回目の通院時に、1-7日用の薬と8-14日用の薬の計2週間分をもらう。2週目は1週目の薬の濃度10倍
・2週間に1度の、実質薬をもらうためだけに1時間以上待つという待ち時間が苦痛

八景ブログ「スギ花粉の舌下治療を実際に開始しました」
この方も初回処方では1-7日用の1週分、翌週に8-14日用の1週分を分けて処方されたパターン。
・初回は副作用を見るために30分病院で待つ必要がある
・シダトレンのシロップは甘い
・シダトレン服用後、30分は飲食禁止
・費用は、初回は初診+検査で3000円程度、検査結果確認のための通院で500円程度、治療1回目で1000円、治療2回目(1週間後)で1000円、その後は2週に1回2000円くらいとのこと



シダトレン スギ花粉舌下液による舌下減感作療法(舌下免疫療法)の1次ソースまとめ

シダトレンに関して詳細な情報を知りたい場合は、発売元や公的機関による一次ソースで
確認をするのが一番信頼性の高い方法であろう。この項目では、一次ソースのピックアップを
した上で、各ソースを簡単にまとめておこうと思う。詳細に関しては、各ソースをご参照
いただきたい。

・シダトレンに関する一次ソース一覧

鳥居薬品「トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ」
シダトレン製造販売元、鳥居薬品による一般向け情報サイト。
まずはこのサイトから見ていくと、シダトレン関連の情報がひと通りわかるかと。

医薬品インタビューフォーム「シダトレン スギ花粉舌下液」(PDF)
医療関係者向けにシダトレンに関する情報の詳細がまとめられた一次資料で、薬の効果、
副作用等、根拠(エビデンス)となるデータも含めて詳しく知りたい場合は、この資料を
起点にして調査をしていくのが良い。

東京都福祉保健局健康安全部環境保健課「スギ花粉症の舌下減感作療法の臨床研究報告書」(PDF)
東京都福祉保健局により約200名、3年間に及び実施された「スギ花粉症の舌下減感作療法」
の結果をまとめた研究報告書。スギ花粉症は日本特有の事象であるため、日本で行われた
この臨床研究データは特に重要な資料になるかと。

一般社団法人日本鼻科学会「舌下免疫療法の指針 パブリックコメント用暫定版」(PDF)
舌下免疫療法に関する、医療現場で直面する様々な疑問(Clinical Question:CQ)について、
エビデンス付きで回答をまとめている日本鼻科学会による文書。見解の根拠となる論文が
いろいろとまとめられているので、免疫療法に関する論文を探す際には、ここで挙げられた
ものを起点にするのがよいと思われる。


鳥居薬品「アレルゲン免疫療法.jp」 
こちらは鳥居薬品の医療関係者向け情報サイト。 製品情報や、診断のための情報、
専門用語を用いたアレルゲン免疫療法に関する説明など、処方する側の観点での
情報が主となっている。薬自体の情報に関してはインタビューフォームよりも内容が薄いので、
特にまとめは行わなず、参考として紹介するにとどめておく。

添付文書「シダトレンスギ花粉舌下液」(PDF)
医療関係者向けのシダトレンに関する情報がまとめられた一次資料。
シダトレンとプラセボによる効果比較のデータなども記載されている。
詳細資料であるインタビューフォームよりも内容はコンパクトで、概要把握のための資料。
インタビューフォームと内容がかぶるので、特にまとめはせずに、参考として挙げるにとどめる。



・各一次ソースの内容まとめ
上記で挙げた各ソースで、興味深い部分を中心にまとめたので、さらに深く知りたい場合は
原典に当たるとよいかと。


鳥居薬品「トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ」
シダトレンに関する一般向け情報提供サイトであるこのサイトは大きく4つのコンテンツがある。
それぞれ簡単にまとめておく。

トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ「もっと知りたいスギ花粉症」
スギ花粉症に関する概要説明。
・花粉症患者は国民全体の約3割、花粉症患者の中のスギ花粉症患者の割合は約90%にのぼる
・日本でスギ花粉症が多い理由は、戦後の木材不足解消のために、生長の早いスギが大量に植えられたことによるもの
・スギ花粉症の対処法には、スギ花粉の除去・回避、アレルギー治療薬などによる薬物療法、アレルゲン免疫療法(減感作療法)、レーザーで鼻粘膜を焼く手術療法の大きく4つがある

トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ「アレルゲン免疫療法を知ろう」
スギ花粉症対策の一つであるアレルゲン免疫療法に関する詳細説明。
IgEという抗体が肥満細胞にくっつくとヒスタミンを放出して、アレルギー症状が出るという
アレルギー症状が起こるメカニズムや、日常生活よりも多いアレルゲンを摂取し続けることに
よってアレルギー反応を抑えるTh1細胞が増え、アレルギー反応を促進するTh2細胞の増加が
抑えられるなどのアレルゲン免疫療法のメカニズムについて記載がなされている。
副作用に関しては、アナフィラキシーという、30分以内に蕁麻疹、腹痛、嘔吐などの
ショック症状が現れる可能性があることについて言及をしている。

トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ「アレルゲン免疫療法用語集」
アレルゲン免疫療法に関する用語集。
例えば「アレルゲン免疫療法」にはアレルゲンを注射する皮下免疫療法という方法と、
アレルゲンエキスを舌下に投与する舌下免疫療法があることや、IgEとはアレルゲンの侵入に
よってリンパ球が作り出した抗体であることなど、専門用語に関するわかりやすい説明がある。

トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ「シダトレンを服用される患者さんへ」
実際にシダトレンを服用している患者用のページで、シダトレンの服用方法から、
薬の種類には増量期用の1-7日用、8-14日用と、維持期用の15日以降用の3種類がある
ことなどが記載されている。



医薬品インタビューフォーム「シダトレン スギ花粉舌下液」(PDF)
シダトレンに限らずだが、薬に関しては、インタビューフォーム(略してIF)の情報が、
一番広範囲にわたって詳細が記載されているので、IFから見ていくのがよいかと思う。

なお、シダトレンのインタビューフォームをひと通り読むとわかるが、ショック、アナフィラキシーに
関するリスクがかなり強調されている。そして、そうした事態に適切に対処できることを担保
するために、この薬を処方できる医師は、舌下免疫療法(減感作療法)の講習会を受け、
受講修了登録をした人に限っている。過去にスギ花粉の健康食品を摂取し、意識不明の
重体に陥った事例もあるとのことで、この療法を受けようと考えている人は、 ショック、
アナフィラキシーのリスクは心に留めておいたほうがよいと思う。

下記、インタビューフォームから、重要そうな部分を適宜まとめている。

まず、花粉症根治の療法である、減感作療法は1911年に初めて報告がされて以来、100年以上
経過している方法とのこと。

開発元の鳥居薬品は、2014年10月に保険適用になるはるか前、1969年からスギ花粉エキスの
販売を行っている。

なお、頻繁に登場するSLITとはSublingual Immunotherapy(舌下の免疫療法)のこと。

この薬を処方できる医者は舌下免疫療法(減感作療法)に関する講習会を受講し、受講修了医師
としてデータベース登録された医師に限られる。薬剤師のみ下記ページから登録医師の確認が
可能。
https://confirm.alg-immunotherapy.jp/

副作用は266 例中36 例(13.5%)、52 件(19.5%)。主には口内炎5 件(1.9%)、舌下腫脹5 件(1.9%)、
咽喉頭そう痒感5 件(1.9%)、口腔内腫脹4 件(1.5%)、耳そう痒感3 件(1.1%)、頭痛3 件(1.1%)等。
参考までに花粉症対策薬として一番メジャーなアレグラの副作用の状況を記載しておくと、
総症例6,809例(国内1,060例、海外5,749例)中、副作用は1,093例(16.1%)。主なものは、
頭痛310例(4.6%)、眠気158例(2.3%)、嘔気83例(1.2%)等。

アレグラと比較して特別副作用が多い薬というわけではないが、頻度不明の重大な副作用として
ショック、アナフィラキシーがあるため、取り扱いに注意を要するようだ。

保険適用されるだけあって、偽の薬であるプラセボと比較した効果の差は明確に示されている。
下記、平均値の差の95%信頼区間の上限、下限ともに0を下回っているので、プラセボよりも
有意に効果が高いことが示されている。 この辺、読み方を知りたい人は下記を参照。
花粉症の薬、ステロイド点鼻薬の強さ・特徴比較まとめ

アレルゲン免疫療法の効果発現メカニズムは十分に解明されていない。
作用発現時間・持続時間に関しては資料なし。

医薬品と認められていない、いわゆる健康食品としてのスギ花粉カプセルを飲んだ女性が
アナフィラキシーショックで一時意識不明の重体になった事例が2007年2月に報告されている。
この薬が処方できるのは12歳以上65歳未満の人であり、妊婦、産婦、授乳婦も安全性は
確立されていない。いずれも使用例がないため適用なし。

用法は1日1回2分間舌下に保持した後に飲み込み、その後5分間はうがい、食事などを控える




東京都福祉保健局健康安全部環境保健課「スギ花粉症の舌下減感作療法の臨床研究報告書」
3年に渡り実施した「スギ花粉症の舌下減感作療法の臨床研究」の結果を取りまとめた報告書。
研究開始時採血実施患者数:202名、投与開始:193名、研究期間内の中止:51名(除外基準に該当:6名、副作用:8名、その他:37名)、研究終了時:142名
奥田の分類と呼ばれる花粉症の重症度スコアに基づき、重症度を算出しアレルギー日誌を記録。
結果70%の患者に症状の改善が確認された。
エビデンスの1次資料として参考になるかと。
投与期間は2006年7月からの2年間。プラセボは使わずにすべて実薬。
方法は吐き出し法。
アレルギー日誌は2007年、2008年、2009年のそれぞれ2/1から4/30まで記載。
最初は2JAU/ml1滴からはじめ、徐々に用量を増やし、5週目以降は2JAU/ml20滴を1週間に1回
奥田の分類とは、くしゃみか鼻水のひどい方と鼻づまりの程度を0点から4点までで評価し、
組み合わせて重症度を決定する方法で、アレルギー性鼻炎の重症度分類で広く用いられている。
海外では減感作療法は一般的な治療方法の一つ。舌下減感作療法の薬もフランスや
デンマークで既に発売されている。
減感作療法は軽症者よりも重症者に効くことが多い。軽症者は改善がないこともあった。
202名中、無症状化を含む2段階以上の大幅改善に至ったのは62名、1段階の改善は38名、
改善なしは42名、中止になったのは60名。



一般社団法人日本鼻科学会「舌下免疫療法の指針 パブリックコメント用暫定版」
舌下免疫療法開発の経緯から、この療法に関する各専門的な質問に、エビデンス付きで
詳しく説明がなされており、臨床研究論文の原著に当たりたい人は、これを起点にして
探すとよいかもしれない。簡単に内容をまとめておく。

舌下免疫療法開発の経緯。副反応が大きい皮下免疫療法(SCIT)に代わり、効果の大きさと
副反応の少なさを併せ持った舌下免疫療法(SLIT)が開発された。

下記、頻繁に出てくるQOLに関して説明をしておくと、クオリティ・オブ・ライフ(Quality Of Life)の
略で、つまり、患者の症状や症状によるつらさが軽減されることをQOLの向上という。


・季節性アレルギー性鼻炎の患者に対して舌下免疫療法を行うことで、症状の改善(QOLを含む)が見られるか。
YES

・ハウスダスト・ダニ(HDM)による通年性アレルギー性鼻炎の患者に対して舌下免疫療法を行うことで、症状の改善(QOLを含む)が見られるか。
YES

・小児の患者に対して舌下免疫療法を行うことで、症状の改善(QOLを含む)が見られるか。
YES。ただし方法論の質が高い論文が少ないため、エビデンスは不十分で成人より効果が低いとする報告もある

・薬物療法が奏功しない患者に対して舌下免疫療法を追加することで効果はあるか。
YES

・喘息を合併していない患者に対して、舌下免疫療法は喘息の発症を抑制するか。
YES

・舌下免疫療法を施行すると、新規アレルゲンによる感作を抑制できるか。
抑制できる可能性はあるが、エビデンスは少ない。

・アレルギー性鼻炎患者に対する舌下免疫療法は、他抗原(多重抗原)による鼻炎、合併するアレルギー疾患(喘息、口腔アレルギー症候群、結膜炎など)に対して効果があるか。
他抗原による鼻炎、喘息、結膜炎に対しては効果が期待できるが、口腔アレルギー症候群に対する有効性を示すエビデンスは少ない。

・舌下免疫療法の効果はどれくらい持続するか。
3年以上継続すると、5年以上は有効性が維持される

・舌下免疫療法の投与法の種類と、その長所・短所はなにか。
投与法には舌下吐き出し法と舌下飲み込み法がある。
抗原保持の面からは舌下飲み込み法が優れている。
剤形は錠剤と液剤があるが、一般に錠剤の方が有効性は高い。
投与スケジュールには季節前投与、季節中投与、季節前~中投与、通年投与がある。
どれがいいかは見解が定まっていないが、一般的には通年投与か季節前~中投与で施行されている。

・舌下免疫療法の開始濃度、増量期の設定はどうすべきか。
増量期がなくても安全で有効性が高い可能性が期待できるが、アナフィラキシーのリスクがあるため注意が必要。治療スケジュールや開始濃度の最適化は今後の課題。

・舌下免疫療法の維持量、投与期間はどうすべきか。
治療期間は18花月以上が推奨。維持量は腫瘍抗原15~25μgが推奨

・舌下免疫療法の副反応の種類、頻度、発生状況ならびに対応の留意点はなにか。
舌下免疫療法の副反応のほとんどは口腔内の局所反応。
全身性副反応も稀に報告はあるが、致死的なアナフィラキシー反応の報告はない。

・舌下免疫療法は皮下免疫療法と同等の症状改善(QOL含む)の効果があるか。
同等の改善効果が見込める可能性はあるが、エビデンスは少ない

・舌下免疫療法は皮下免疫療法より安全か。
YES。舌下免疫療法では副反応の多くが口腔内など局所的なものであり、
アドレナリンを要するアナフィラキシー反応の頻度は皮下免疫療法よりも少ない

・舌下免疫療法の適応とならないのはどのような症例か。
β遮断薬による治療、心血管疾患、重症喘息や不可逆の気道閉塞、免疫不全、精神障害、薬をちゃんと飲まない患者、妊婦、5歳未満

・舌下免疫療法の作用機序はどのように考えられているか(皮下免疫療法との違い)
舌下経路での抗原投与により貪食される口腔粘膜は、皮下と異なり、好酸球、好塩基球、マスト細胞などのエフェクター細胞が少ないため、投与された抗原がこれらの細胞と出会う機会が少なく、全身性のアナフィラキシー反応が起きにくい。

・舌下免疫療法の臨床マーカーにはどのようなものがあるのか
IgG4が有力な臨床マーカーの候補



その他、シダトレン、舌下減感作療法に関する参考ページ

その他、調べていて参考になったページを挙げておく。

ゆたクリニック「スギ花粉症の舌下免疫療法とは?」
保険適用ではない時代から舌下免疫療法を100例以上も行ってきた、三重県の専門医による
舌下免疫療法と皮下免疫療法(注射)に関する説明ページ。ここは、この病院での臨床データ
を独自に集め、それをベースにもろもろの記載がなされているので非常に興味深い。
以下、特に独自性の強い興味深かった記述を中心にいくつかまとめてみる。
・治療の満足度のアンケートを無記名で取った結果、薬治療より免疫療法のほうが患者の満足度が高かった
・免疫療法の効果は治癒が20~30%、30%が大きく軽減、20~30%が軽減、10~20%は効果が無いという結果になった
・治療薬の味は、グリセリンが入っているためやや甘く、酸味もある
・舌下免疫療法は皮下免疫療法よりも安全であるが、それでも1~2%は軽微な副作用で中止に至っている
・舌下法と注射法では、この病院の調査では注射法のほうが効果があった。他でも、同等に効いたという報告はあるが、舌下法の方が効いたという報告はない。ただし舌下法でも飲み薬と点鼻薬の治療よりは効果が高い
・舌下免疫療法中でも花粉症の薬を併用することは可能。ただしステロイド内服薬との併用のみ不可
・治療費用は初回の検査で5000円程度、その後は1ヶ月あたり3000円~4000円程度


病院受診マニュアル「シダトレン舌下薬をやってみるか花粉症持ちの内科医が考えてみました」
花粉症持ちの内科医の方が、シダトレンによる舌下免疫療法を自分がやるかどうかを考えて
みた記事で、判断に関する要点が簡潔にまとめられていて読みやすい。内容をまとめると、
・治療期間は最低2年と長い上に、2週間に1度薬をもらわなければならないので相当面倒くさい
・効果のある人は全体の70%で、30%はドロップアウトしているので、実質治療が有効なのは50%
・費用は年間2万円前後と想定される
・アレルギー専門医かつシダトレン処方の講習会受けた医師しか処方ができない
とのこと。この方は手間もかかるし今はやらないという判断になったようだ。
正直この治療法のつらいところは、薬を飲むモチベーションが上がる花粉症シーズン以外でも
欠かさず飲み続けなければならないところにあると思う。それが出来る人は、実際のところ
どれだけいるのか甚だ疑問である。


後藤こどもクリニック「減感作療法」
池袋近くにある専門医による減感作療法の説明ページ。皮下減感作療法も行っているようだ。
1ページに減感作療法に関する説明をコンパクトにまとめていてわかりやすい。
興味深いと思ったのが、「クリニックから見た減感作療法」という項目で、そもそも医療機関
からすると、この方法は手間がかかる割には保険点数上のメリットがあまりないので、
クリニック側から見てもあまり積極的に行うメリットが少ない治療法のようだ。それが
減感作療法が普及しない一因になっているとのこと。また、それでも減感作療法を行って
いるところは、経験や実績のあるところが多いとのこと。


本棚(小児医療・アレルギー・アトピー他)「「(スギ花粉)舌下免疫療法講習会」に参加してきました。」
舌下免疫療法(減感作療法)の講習会を実際に受けた医師の感想。
基本的な知識の解説が中心で、実際のノウハウは乏しい印象。
講演の中で、口腔粘膜の違和感や痒みや嘔気など軽度の副作用の頻度は決して少なくはないというお話でしたが、その副作用が出た場合の対策も示されませんでした。中止すべきか減量すべきか吐き出し法に代えるべきか・・・?
とのことで、あまり実際の診療に役立てるような内容ではなかった模様。


姫路眼科 西川クリニック 院長BLOG「シダトレンは普及しない」
シダトレンによる治療の実態に関していろいろと興味深いことを書いている。
まず、実際にシダトレンを手にできるのは2回目の通院時で、1回目は採血とそれを元に
スギ花粉症であることの診断を行う回になる。シダトレンの講習会は大変な人気。
治療段階で実際に2週間に1度の通院をする人は公表しないほうがいいほど低い。
つまり2週に1度の通院が必要で、3年以上も毎日薬を飲まなければならないこの治療法は
ものすごくハードルが高いということだ。


ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック「スギ花粉症舌下免疫療法(SLIT)の根本的治療ワクチン “シダトレン”が、が保険適応となり、発売が決まりました。」
1ヶ月の薬代は保険適用で約1000円。これに診察代と処方箋発行料がプラスされる予算感。
3年から5年程度、毎日服用する必要がある。
2015年10月8日までは2週間分の処方しかできない。従って2週間毎の通院が必要。


東京銀座スキンケアクリニック ドクターブログ「シダトレン(花粉症免疫舌下療法) 治療の流れ」
治療の流れと費用について。
スギ花粉アレルギーの血液検査(約7000円)
シダトレンの処方(約2000円)
1週間後に再診でより濃度の濃いシダトレンを処方(約3000円)
更に1週間後再診で、維持期用のシダトレンを処方。以降2週間毎にこれが繰り返される(約1000円)


呼吸器内科医「スギ花粉症に対する減感作療法:シダトレン®の使用について」
医師側から見たシダトレン処方までの流れに関して説明している。
これはどちらかというと、これからシダトレンを自分の病院でも処方したい医師がちょっと見て
おくとよいページなのかも知れない。講習会、eラーニング、eテストを受ける必要があるという内容。

スギ花粉を含む製品の薬事法上の措置について(PDF)
スギ花粉を含む食品に関する注意喚起について(PDF)
2007年2月に、健森(けんしん)の販売する健康食品のスギ花粉カプセル「パピラ」を摂取した
和歌山県の女性がアナフィラキシーによる意識不明の重体に陥った。これを受けて、
スギ花粉を主成分としたカプセル・錠剤等、減感作療法を目的とした食品を医薬品と判断し、
薬事法に抵触するとして販売を禁止する処置を取ったという内容。
つまり現在、医薬品であるシダトレンを除く、スギ花粉を使った民間の減感作療法の薬、
食品は存在しない。