花粉症の点鼻薬 アラミストのまとめ

アラミストは花粉症のステロイド点鼻薬(処方薬)の一つ。花粉症の症状が重い場合に、飲み薬
であるアレグラ、ザイザル等の第二世代抗ヒスタミン薬と併用して使われることが多い薬。
以前まで主力であったフルナーゼ(1日2回)にかわり、1日1回で長く効くタイプのステロイド点鼻薬が
現在の処方の主流になってきており、アラミストはナゾネックス、エリザスとともに1日1回タイプの
花粉症点鼻薬としてよく処方されるものの一つとなっている。

アラミストに関する主な情報

1日薬価:145.7円(1日1回各鼻腔に2噴射づつ) 薬価サーチより
一般名:フルチカゾンプロピオン酸エステル
製造メーカー:グラクソ・スミスクライン株式会社
アラミストに関する一次情報(添付文書) (独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
アラミストのインタビューフォーム(詳細情報、PDF)

アラミストは現在主流になりつつある1日1回タイプのステロイド点鼻薬の一つ。
フルナーゼの製造販売元と同じグラクソ・スミスクライン社が開発した新薬である。
ステロイドとはいえ、点鼻薬なので万が一体内に入っても効果をなくしてしまう「アンテドラッグ」であり、
ステロイド内服薬のように副腎皮質でのホルモン生成機能を退化させてしまうなどの副作用は少ないと
言われている。ただし、ステロイドはその性質上、抗体の力を弱めて炎症を抑えるという効き方を
するので、細菌による感染症がある人が使うとまずい。該当する方は医師に確認した方がよい。

アラミストとフルナーゼ、ナゾネックス等他のステロイド点鼻薬との違い

他の薬剤と比較した特徴を簡単にまとめると以下のようになる。

・フルナーゼよりも効果の発現が早い(フルナーゼは2日、アラミストは1日で効果が発現する)
・匂いがない(フルナーゼ、古いタイプのナゾネックスは匂いあり)
・眼に対しても効果がある(これは他の薬剤には記載されていない効果。メカニズムは不明)
・スプレーのレバーが容器の横にある独特の形状で、レバーが固い

その他、グルココルチコイド受容体への親和性がフルナーゼの成分の1.7倍あるとインタビューフォームに
記載があるが、効果の強さそのものはフルナーゼもナゾネックスもエリザスも違いがないことが、
数々の治験結果によって実証されている。また、飲み薬の第二世代抗ヒスタミン薬との比較では、
クラリチンやジルテックよりも効くという結果が出ている。詳しく知りたい方は、下記に海外の治験論文、
各薬剤の詳細情報が記載されているインタビューフォーム等の情報をまとめたのでご参照のこと。
花粉症の薬、ステロイド点鼻薬の強さ・特徴比較まとめ

ただ、個人レベルでの薬の相性はあるので、特定の薬剤が効かなければ、その旨を医師に伝えて
他の薬剤を試してみるというのはありかと。

他、いくつか参考になる比較記事の紹介。効果に差はないので主に使用感の比較になる。

・岡山・・あなたの街の健康応援団!・・はな薬局の”勉強会・研修デキゴトロジー”・「アラミストの勉強会をしました。」
薬剤師の方のアラミストに関する勉強会記事。アラミストの重要な特徴として、
・1日目で効果が現れる(それまで主に使われていたフルナーゼという薬は2日かかる)
・1日1回でよい(フルナーゼは1日2回)
・鼻だけでなく眼症状にも効果がある
の3つを挙げている。なぜ目に効くかのメカニズムは解明されていないのだが、仮説が記載されて
いたのが興味深い。
①アラミストが細胞内グルココルチコイド受容体に強い親和性を示し、抗炎症作用を発揮する
②鼻腔内でのアレルギー反応を抑制することにより鼻-眼間の神経反射を抑制することが想定される
③眼症状発現の原因となるメディエーターの遊離を抑制することで症状の改善が期待できる
(直接花粉が眼に触れて起こる反応を抑えるものではない。)
の3つが考えられるようだ。ちなみに容器が押しにくいという欠点があるので年配の方には少し
使いにくいだろうという使用感を述べている。

折口内科医院「花粉症の新しい点鼻薬」
内科スタッフが記載しているアラミストとナゾネックスの主に使用感の違いについて。
どちらも1日1回で効果が持続する新しい薬なのだが、ナゾネックスは匂いが強いという欠点があり、
アラミストはスプレーのレバーが押しにくいという欠点があるとのこと。

どうなの?調剤薬局の薬剤師に聞いてみよう!!「エリザス点鼻粉末が今年人気な件」
主にはエリザスに関する記事。このブログを書いている薬剤師の方によると、2013年時点で
エリザスというステロイド点鼻薬が売れ筋になってきているとのこと。エリザスはナゾネックス、
アラミストと同じ1日1回タイプの点鼻薬だが粉タイプというのがその2つと異なるところ。
無味無臭、使用後に鼻から液だれがない、鼻が詰まっていても粒子が回りこんで効く、という
ところがエリザスのメリットとのこと。以前は毎回カプセルをセットするのが使いにくかったが、
最初からカプセルが入っている使いやすいタイプが2012年6月に発売されたようだ。

薬剤師4コマ劇場R2「改良型アラミスト」
アラミストの欠点について。スプレーするときの横のレバーが少し固いらしい。ということで、
年配の方には同じ効果があり、同じ1日1回タイプのナゾネックスの方をこの薬剤師の方は勧めている。

アラミストの小児適用承認に関する話題

2014年3月17日にアラミストの小児適用がされたとのことで、ネット上でもこの小児適用の話題が
多く取り扱われている。いくつか記事を紹介。

薬事日報「【承認】アラミスト点鼻液、ヴォトリエント錠 グラクソ・スミスクライン」
アラミストが小児適応追加承認を取得したというニュース。アラミストは大人は1日1回各鼻腔に
2噴霧するが、小児は1噴霧とのこと。これを想定しての2噴霧設計だったのね。

GlaxoSmithKlineプレスリリース「アレルギー性鼻炎治療剤「アラミスト®」小児適応追加のお知らせ」
アラミストの製造販売元グラクソ・スミスクライン株式会社のアラミスト小児適用に関するプレスリリース。

調剤薬局暇人薬剤師の独り言「花粉症のアラミスト点鼻薬が小児に使えるようになったぞ!! 」
アラミスト、ナゾネックス、フルナーゼの小児用に関する情報がまとまっている。
アラミストは2歳から、ナゾネックスは3歳から、小児用フルナーゼは5歳から使用できるとのこと。

ここであえてのアラミスト
アラミストが片側づつ2噴射する理由について、治験医師がコメントしていたのが興味深い。
1噴射で小児用にも使えるようにあえてそうしているとのこと。

ココヤク「アレルギー性鼻炎治療剤「アラミスト」が小児適応に」
2014年3月17日付けでアラミストが小児適用の承認を取得したというニュース。
小児適用が認められているアレルギー性鼻炎治療薬は少ないとのこと。

アラミストと同じ成分の市販薬について

ここまでこのページの情報を読まれた方はもう理解しているかとは思うが、「アラミスト 市販薬」
のようなワードで情報を検索してくる方も多いので改めて記載をしておく。アラミストに市販薬は
ない。強力な薬、新薬といったものは常に医師の処方箋が必要な処方薬として発売されるので
ある。薬の特許は出願から20年で切れるので、特許が切れた後に、ジェネリック薬品が出たり、
OTCとして処方薬が市販薬になって発売されたりするというのが医薬品のライフサイクルである。

ということで、アラミストの市販薬はないから病院にいってくださいというのが結論なのだが、
市販薬で同種の薬を探している人のために似たような薬の候補を上げておくと、ナザールAR、
またはコンタック(R)鼻炎スプレー<季節性アレルギー専用>という2つの薬だけは、市販薬の
ステロイド点鼻薬となっているのでそれを探すのがよいであろう。これは、アラミストよりも二世代
前のステロイド点鼻薬で、効果自体はアラミストと差はないのだが、効果時間が短いため、1日に
2~4回点鼻しなければならないというのが欠点。詳細は下記を参照のこと。
花粉症の点鼻薬 ナザールARのまとめ
花粉症の薬、ステロイド点鼻薬の強さ・特徴比較まとめ

その他、アラミストに関するネット上の話題

薬局のオモテとウラ「写真で見るアラミスト点鼻液27.5μg56噴霧」
これはコメント欄に注目すべき投稿があったのでピックアップ。
12歳の子供にアラミスト点鼻薬を使ったら、視神経を痛めてステロイド緑内障による視覚障害
が起きていると緑内障の専門医から指摘されたのこと。副作用が少ないと言われている
ステロイド点鼻薬ではあるが、鼻は目と繋がっているということで、子供への使用のリスクは
頭に留めておいたほうがよいかもしれない。

グラクソ・スミスクライン株式会社「アラミストのQ&A」
アラミストの製造元グラクソ・スミスクライン社による一般向けQ&A。
名前の由来は「アレルギーに有効なミスト(霧)」から来ているとか、フルナーゼよりも効果が長く
特有の匂いがない、24時間以内に効果が現れる、目にも効果があるなど、いろいろ面白い情報が
記載されている。ちなみに目に効くメカニズムは解明されていないとのこと。

耳鼻科医の診療日記「妊娠している方に使える抗アレルギー剤は?」
妊婦に対する薬の安全性に関しては日本の基準はないのだが、米国のFDA基準とオーストラリア基準
というものがあり、これを元に安全な可能性の高い花粉症薬をピックアップしている記事。
内服薬よりも点鼻薬のほうが薬の血中濃度が上がらず安全性が高いとのことで、
アルデシンAQネーザル、フルナーゼ、ナゾネックス、アラミストは問題がないだろうという判断をしている。

栗原勇大の眼科ブログ「点鼻薬」
アラミストに関する情報自体はそんなにないのだが、ちょっと意外な驚きがあったので紹介。
この方は眼科医なのだが、専門外の内服薬や花粉症関連の薬には詳しくないらしい。
2013年のこの時点で患者にフルナーゼやザジテンを処方していたとのこと。あの眠気の強いと
言われているザジテンをいまどき処方しているのか・・。ここから我々が学ぶべきことは、医者だからと
いって薬に詳しいとは限らないので、少なくとも専門医(鼻や花粉症のことなら耳鼻科)に診察して
もらって薬を処方してもらうほうが良い薬をもらえる可能性が高いということであろう。
こうしていろいろ文献を調べた限りでは、点鼻薬はナゾネックスかアラミスト、内服薬ならザイザル、
交通業務従事者ならクラリチンかアレグラが第1選択肢になるのではなかろうかと私は思う。

りんでん記「アラミストを分解してみた」
アラミストの容器を分解してみた人の記事。外がプラスチック、中はガラス瓶になっているようだ。
公式FAQで分解できないと書いてあるものを分解してまでゴミを分別して出さなければならない
自治体があるのかどうかは疑問だが参考までに。元記事の方も分解はおすすめしていない。

地域医療の見え方「花粉症とドーピングについて。」
アラミストに関する記載は多くないが、花粉症薬とドーピングという観点から見解や情報を
まとめている。どうやら競技会では筋肉増強剤としてのステロイド(テストステロン)だけでなく、
免疫・炎症を弱めるステロイド(糖質コルチコイド)も禁止されているらしい。また小青竜湯は
エフェドリンという物質を含んでおり、これも競技会時禁止薬物になっているとのこと。
アラミストは問題ないというのがこの薬剤師の方の見解。

服薬指導マニュアル「アレルギー性疾患」
薬剤師の方がまとめているアレルギー関連の薬の情報まとめ。アラミストに関してはちょこっと
しか書かれていないが、広範囲にわたり情報の記載があるので参考になるかと。

ブロードクリエーション「【花粉症対策】眠くならずに良く効いた花粉の市販薬・処方薬のまとめ」
花粉症の点鼻薬に関する情報がよくまとまっている。特に市販薬でよくある血管収縮剤という
即効性はあるものの使いすぎると鼻の症状が悪化してしまう成分と商品についてまとまっているので、
市販の点鼻薬で考えている人は参考にするとよいかと。市販薬ならナザールARが血管収縮剤なしの薬。