花粉症の民間療法 小青竜湯のまとめ

小青竜湯は花粉症の民間療法として用いられる漢方の1つ。多くの科学的評価の行われて
いないものと異なり、偽薬(プラセボ)と比較した上で効果があることが実証されている薬。
また、多くの西洋医学の花粉症処方薬で問題となる眠気の問題が発生しないのも特徴。

小青竜湯に関する主な情報

一般名:小青竜湯
製造メーカー:ツムラ株式会社など
小青竜湯に関する一次情報 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構)

小青竜湯が偽薬(プラセボ)と比較して効果があることは実証されており、上記添付文書にも
記載がある。
改善率(%) 
中等度改善以上 軽度改善以上 
小青竜湯群 44.6(41/92) 83.7(77/92) 
プラセボ群 18.1(17/94) 43.6(41/94) 

他、下記資料にも詳細な情報がある。
「小青竜湯の基礎と臨床研究」の紹介(PDF)
これによると、小青竜湯は花粉症治療の中心となる抗ヒスタミン薬と比較して、
効果範囲が広いようだ。ヒスタミンだけでなく、セロトニンなどへの拮抗作用もある。
つまりはうつ病にも効くということになるが、効果範囲が広いというのは副産物としての効果
が発生する(つまり副作用)という意味でもあるので、ここは良し悪しでもある。
この資料でも耳鼻科医馬場駿吉氏が行ったプラセボ比較実験の内容に関して紹介をしている。

小青竜湯とザジテン等他の花粉症薬との比較

「小青竜湯の基礎と臨床研究」の紹介(PDF)には他の花粉症の薬との比較に関する記載も
あったのでそちらも参考になるかと思われる。
漢方薬との比較に関しては、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)とは同程度の効果、
大青竜湯との比較に関しては大青竜湯の方が効果が高いという結果が出ている。

西洋薬に関してはケトチフェン(ザジテンの成分、第二世代抗ヒスタミン薬の一つではあるが、
眠気が強いという特徴がある。比較薬剤としてよく用いられる)との比較事例がある。
くしゃみ発作、鼻汁(鼻水)、鼻閉(鼻づまり)の鼻症状の改善度は小青竜湯とケトチフェンで
同程度という結果になった。もうちょっと詳細な比較資料が欲しいところではあるが、
この結果を見る限りだと、第二世代抗ヒスタミン薬などの西洋薬と同等の改善効果が
期待できる可能性があることになる。

小青竜湯の副作用について

眠くならない花粉症薬ということで、西洋薬と比べて良いことだらけに見える小青竜湯だが、
副作用や飲まないほうが良い人もいるようだ。下記が詳しい。
品川心療内科-日録-SMAPG-Panalion「花粉症には小青竜湯が第1選択」
心療内科の医師が書いているこの記事によると、
・小青竜湯は酸っぱい
・花粉の飛散がひどい年は小青竜湯単独だとしんどい
・小青竜湯はエフェドリンを含有する麻黄(まおう)が含まれているので、高齢者、胃腸が弱い方、体力のない方には動悸、胃腸障害などの副作用が生じる恐れがある
などの欠点や副作用があるようだ。エフェドリンという成分関しては下記参照。
気管支拡張剤、興奮剤などに使われるそうで、血圧を上げる作用があるため、高血圧の人は使用注意の
成分のようだ。単純に効果が高い大青竜湯を使ったほうが良いというものでもないということかと。
wikipedia「エフェドリン」

エフェドリンを成分として含む生薬の麻黄に関してはこの記事が詳しい。
証クリニック「麻黄…エフェドリンのお話」
覚せい剤には遠く及ばないものの、エフェドリンには覚醒作用があるようだ。麻黄は血圧を上げる
副作用などもあるのだが、漢方では経験上安全とされる用量に設定されているとのこと。
体温を上げたり、風邪のだるさを取るといった作用はこの成分に起因しているようだ。

花粉症の民間療法について

花粉症の民間療法に関しては厚生労働省の下記のページが比較的よくまとまっている。
花粉症の民間医療について
約6700人から代替医療にどんなものを利用しているか、それらは効果があったかなかったかを
患者の感想としてまとめたものとなっている。
結果、人気があった民間療法は甜茶、ヨーグルト、スギ花粉飴の順、
効果があるとの声が多かったものは漢方、鼻スチーム療法、鼻洗浄療法の順となった。
ちなみに経験者が多い甜茶に関しては効果が無いと感じた人があると感じた人よりも圧倒的に
多いという結果だった。

花粉症に対する民間療法のEBM(PDF)
EBMというのはEvidence-based medicine、つまり根拠に基づいた医療の略語。
こちらも上記厚生労働省のページの執筆者と同じ耳鼻科医の岡本美孝氏が執筆している。
花粉症の民間療法に関して、上記記事とかぶる資料も多いが、新たな情報も記載されている。
この調査によると、花粉症患者の中の民間療法経験者は約20%程度とのこと。
また、ドイツで古くからある、アレルゲンを希釈して投与することで自然治癒力を高めて治す
方法であるホメオパシーに関して、偽薬(プラセボ)と比較して効果があったとの報告が海外で
あったことに触れている。 ただし、方法の詳細に触れていない資料も多いようで、資料の
信頼性は必ずしも高くないとのこと。

花粉症に対するL-55乳酸菌含有ヨーグルトの臨床的有効性(PDF)
L-55乳酸菌含有のヨーグルトと、L-55乳酸菌を含まないヨーグルトで被験者を分け、効果の
比較を行った治験論文。結論として花粉症薬と併用した人同士の比較ではL-55乳酸菌含有の
ヨーグルトを食べた人のほうが症状が改善されたが、全体・花粉症薬未使用の被験者同士の
比較では有意差が認められなかったとのこと。