花粉症の処方薬 アレロックのまとめ

眠気が少ないと言われる第二世代抗ヒスタミン薬の一つ。
ただ、第二世代抗ヒスタミン薬の中でも大きく分けると効果が強いタイプと眠気が少ない
タイプの2つに分類できて、アレロックは多少眠気は出るが効果が最も強いタイプというのが
一般的な評価だ。ちなみに花粉症の目薬の処方薬として最もシェアの高いパタノールは、
このアレロックの成分を目薬にしたものである。

アレロックに関する主な情報

1日薬価:120.4円(1日2錠) 薬価サーチより
一般名:オロパタジン塩酸塩
製造メーカー:協和発酵キリン株式会社

アレロックに関して、ネット上を見る限り主な関心は下記に集約されそう。
・アレロックと他の代表的な第二世代抗ヒスタミン薬の比較
・アレロックの副作用と死亡例に関する評価
・アレロックとアレロックOD錠の違いに関して
・アレロックのジェネリックに関して

アレロックと他の代表的な第二世代抗ヒスタミン薬の比較

アレロックに関しては、医者、薬剤師、患者等、複数の立場の複数のソースを確認しても
だいたい評価は一致していて、効果はもっとも強い部類に入るが、眠くなりにくいといわれる
第二世代の抗ヒスタミン薬(花粉症薬)の中では比較的眠くなりやすいというものだ。

■眠気について
まず、花粉症薬の代表的な副作用である眠気に関して、アレロックはアレグラ、ザイザルなど
他の花粉症薬と比較してどうなのか見ていきたい。これは客観的なデータがあって、薬の
副作用に関しては実験データ(臨床データ)があるのでそれを確認すれば一目瞭然。
行政機関の医薬品医療機器総合機構の各花粉症薬の副作用のデータを見てみよう。
副作用の数値の計測基準が複数存在するので、極力、薬の承認時までの調査と、その後の
使用成績調査の合計値で比較するようにする。第一世代に関しては、使用成績調査などの
数値がないので、添付文書の数値を記載する。

・第二世代抗ヒスタミン薬の眠気の副作用比較(国内の承認時・使用成績調査合計)
アレロックの副作用 眠気:7.0%(674件/9620例中)
アレグラの副作用 眠気:2.38%(104件/4367例中) ※調査合計値はインタビューフォーム参照
アレジオンの副作用 眠気:1.21%(102件/8443例中)
クラリチンの副作用 眠気:6.35%(105件/1653例中) ※クラリチンは使用成績調査の値の記載なし
ザイザルの副作用 眠気:5.2%(67件/1292例中) ※ザイザルは海外データのみ存在
ジルテックの副作用 眠気:3.26%(233件/7155例中) ※調査合計値はインタビューフォーム参照

・第一世代抗ヒスタミン薬の眠気の副作用比較
タベジールの副作用 眠気:9.2%(191件/2076例中)
ペリアクチンの副作用 眠気:15.3%(234件/1529例中)

第一世代の抗ヒスタミン薬は古い薬のせいか、副作用に関する臨床データがないものも
あり、あるものをいくつかピックアップしてみた。第一世代と第二世代の比較では第二世代
のほうが眠くならないことがわかる。また第二世代の中では、アレロックは比較的眠気の
起きやすい薬であることもこの比較からもわかる。

ちょっと気になったのが薬の「重要な基本的注意」の中に眠気に関する項目の記載がない
ことで有名な2つの薬、アレグラとクラリチンのうち、クラリチンの眠気の発生率が高いこと。
逆にアレジオンはアレグラよりも眠気の発生率が少ないのに眠気に注意する旨の文言が
ある。

これはおそらくだが、眠気に関する実験をわざわざ行なって、ニセの薬(プラセボ)を飲ませた
グループと比較して差がなかったことを証明しているかいないかの差なのかなと思う。
クラリチンに関してはパイロットが飲んでもプラセボと比較して眠気に差がなかったことを
証明している。

もう一つ、ザイザルに関しても、ジルテックの眠くなる成分だけを取り除いたものがザイザル
なので、もっと眠気の項目に差が出てもいいと思うのだが、あまり出ていない。
まぁ化学の実験のように、試験管の中で同一条件でやるわけじゃないから、結構臨床データ
というのはパーセントにずれが生じやすいのかも知れないという感想。

複数の方のアレロックに関する眠気の感想は発言小町のものが比較的いろいろな意見がある。
発言小町「アレロックって眠くなりますか?」
眠くなる人が大多数だが、中には眠くならない人もいるようだ。


■効果について
効果については客観的なデータというのがなく、いろいろな方の意見を総合して、
なんとなく序列を付けるしかなさそう。ただ、相性という要素も多分にあるそうなので、
一般的に強いと考えられる薬よりも弱いと考えられている薬の方が効く人もいるようだ。
第二世代抗ヒスタミン薬の中での比較で言うと、アレロック、ザイザル(もしくはジルテック)が
強い薬で、アレグラ、クラリチンなどが弱い薬という評価が大方の医療関係者の見方のようだ。
参考になるサイトをいくつかピックアップ。

耳鼻科医の診療日記「第2世代抗ヒスタミン薬の比較」
耳鼻科医の第二世代抗ヒスタミン薬の比較記事。横断的に比較をしていてわかりやすい。
この人の評価ではアレロックが最強、その次がザイザル(ジルテック)の順。

新宿駅前クリニック「眠くならない花粉症治療薬」
アレルギー科の病院のサイトの記事。こちらも各第二世代抗ヒスタミン薬の評価が
横断的に書かれていてわかりやすい。アレロックとジルテックが一番強いという評価。
比較対象に入っていないが、ザイザルもこの部類に入ると類推してよいだろう。

おねぇ系薬剤師の独り言「花粉症時のお作法~お薬編~」
薬剤師の方がアレロック、ザイザル、アレグラ、クラリチンの4種類の薬を実際に飲んで
評価をしている記事。この人もアレロック、ザイザルが効果が強く、アレグラ、クラリチンは
それよりも効果が落ちるとの評価。アレロックとザイザルで比較するとこの人はザイザルは
ほとんど眠気を感じないという評価。

元MR、現在は開局薬剤師「花粉症の薬はどれがオトクか?(内服編)」
薬剤師の方が6つの第二世代抗ヒスタミン薬を飲んだ感想を述べている記事。
感想から効果の順位を読み取ると、
アレロック>ジルテック>=クラリチン>アレジオン>=エバステル>=アレグラ
という感じ。アレロックが一番効いて、ジルテックやクラリチンも効いているようだ。

健康・病気・症状相談コーナー(あーちゃんの部屋)「アレグラが効かない vs. アレロック」
内科医の方がアレロック、アレグラ、アレジオン、アゼプチンの評価を記載している。
アレロックは効果としては最強だが眠気が強い、アレグラは効果はマイルドだが眠気がない
という評価。

住吉皮膚科ブログ「オロパタジン(アレロック)は抗アレルギー作用が強い?」
皮膚科の医師のブログで、若干専門的だが、上記の薬の比較記事とは違う視点で
書かれていて興味深い。Nature(ネイチャー)という学術誌に掲載された論文に関して
記載をしていて、それによるとアレロックのほうがアレグラやザイザルよりもヒスタミンを
ブロックする力が強いとのこと。該当の論文ってのは下記かな?
Structure of the human histamine H1 receptor complex with doxepin.
専門的すぎる上に英語すぎてちょっと読み解けないです。

処方ベース、服用ベース、原理ベース、いずれの意見でもアレロックが強い薬で、
眠くなりやすいという評価はほぼ一致しているようだ。


アレロックの副作用と死亡例に関する評価

アレロックに関しては平成20年(2008年)4月1日から平成23年(2011年)3月4日までの
約3年間で因果関係が否定出来ない2件(90代男性と40代女性)の劇症肝炎による死亡例が
あったということで、話題にしているブログも複数見受けられます。1次情報は下記。
厚生労働省「重要な副作用等に関する情報 オロパタジン塩酸塩」

これに関しては、年間約448万8000人(平成21年11月から平成22年10月)、
3年間で約1300万人が使用する中での2件であり、発生確率としては0.000015%と非常に
低く、かついずれの例も複数の薬剤を使用していることによる発症なので、アレロックの
せいかどうかは断定できないということもあり、アレロックという薬剤自体の安全性が揺らぐ
ことはないというのが医療関係者の大方の見方のようだ。

こやの皮フ科院長ブログ「アレロックによる劇症肝炎死亡例」
皮膚科院長の方の記事。死亡例の頻度は他の薬剤と比較しても少ない方で、この例に
より、処方件数を減らすつもりはないとの評価。ただ、薬というのはあくまで副作用がある
もので、患者に対する情報提供の必要性はあるとの認識。

薬局薬剤師のイロイロ「アレロック錠で劇症肝炎による死亡例が発生か」
薬剤師の方の記事。マスコミなどが不安を煽るような報道をしなければよいがと、過剰報道
に対する懸念を書いている。ちなみに劇症肝炎というのは死亡率の高い重い肝炎のこと。

ヤフー知恵袋「★抗アレルギー薬:アレロック服用で劇症肝炎、2人死亡!」
ヤフー知恵袋での本症例に関する質問と回答いろいろ。

OKWAVE「アレロックの安全性」
OKWAVEでの本症例に関する質問と回答いろいろ。

まとめとしては、マスコミが大々的に報じて、質問サイトに質問が上がるくらい話題には
なってしまったが、他の薬と比較しても劇症肝炎の副作用発症確率は低く、薬として
安全な薬であることに変わりはないこと、ただ、薬というのは副作用は必ずあるので、
薬を飲むことで異常を感じた場合には注意が必要ということかと。


アレロックとアレロックOD錠の違いに関して

これはアレロックそのものに関する話題と言うよりは、通常の錠剤とOD錠って何が違うの?
ということだと思うが、アレロックに関して、今まで通常の錠剤を出されていて、途中から
OD錠を出されたという経験をされた方が複数おられるようで話題になったのかと。

結論としてはOD錠は口で溶けるように作られているので水なしで飲めるのが便利というのが
通常の錠剤との違い。効果、効能に対する違いは特になし。
ではなんで通常の錠剤からOD錠に変わった人が多くいるのかというと、複数のソースを
見る限り、製薬会社の「事情」によるもののようだ。

ヤフー知恵袋「花粉症でアレロック錠を飲んでいました。今日同じ病院でアレロックOD錠を・・」
いつもアレロック錠を飲んでいた方が同じ病院でアレロックOD錠をもらい、違いに関して
質問をしている。ODとは”Oral Disintegrant”(口腔内で分解する)の略で、主成分自体に
変わりはないこと、薬の営業をしているMRの方が勧めて病院が薬のタイプを変えたのでは
ないかと回答者は推測している。

ヤフー知恵袋「花粉症の薬(アレロック)について質問です。」
この方も医者から「新しい薬だけど前のと同じだから」とOD錠を処方され、違いを質問している。
回答によると、OD錠は値段が高くなるので水なしで飲む必要がないなら通常の錠剤に
戻したほうがいいと回答している。ちなみにOD錠は胃薬や循環器の薬に向いていて、
アレルギーの薬にOD錠を使うのは単に製品寿命を伸ばすための特許対策だと言っている。

ヤフー知恵袋「アレロックとアレロックODの違いってなんでしょうか?」
この方も以前は通常のアレロックだったのにあるときOD錠を処方されて質問している。
回答者によると、従来のアレロックは後発品のジェネリックが発売されると値段が下がるなどの
理由から製造を中止していて、現在先発品はOD錠のみ作っているとのこと。

だんだん製薬会社の「事情」が見えてきたと思うが、このOD錠の事情に関して一番詳しいと
思われる記事は下記。
薬剤師kittenの雑記帳「口腔内崩壊錠(OD錠)の有用性の裏で。」
薬剤師のこの方は、製薬会社がなぜOD錠を開発するのかに関する表の事情と裏の事情を
記載している。
表の事情に関しては、飲み込む力が弱い高齢者などにとっては、口の中で溶けるOD錠は
飲みやすくて便利という点を挙げている。

そして、裏の事情は3つ。一つは後発品対策。OD錠が存在する薬のほとんどは特許の切れた
薬であり、先発の製薬会社はOD錠を新たに作ることで、通常の錠剤のジェネリックが大量に
でて値段が下がってしまっても、OD錠で再度特許を取って、そちらの値段は維持できると。

二つ目は一つ目とも関連しているのだが、処方箋対策。処方箋にアレロックと記載した場合は、
ジェネリックに変えることが可能なのだが、アレロックOD錠と書いた場合、OD錠のジェネリック
が存在しない限り、ジェネリックへ変更することができない。

三つ目は薬局が抱える在庫が増えるため製薬会社の売上が上がること。OD錠が出たからと
いって、通常のアレロックも薬局は抱えなければならない。なぜなら医者からはどちらのタイプの
処方箋が出される可能性があるからだ。それによって薬局が抱える在庫の種類が増え、
製薬会社の売上が上がるという仕組み。

医薬品メーカーのこうした儲け方に関する手口は他の薬剤師も指摘をしている。
みやび日記「医薬品メーカーの裏の顔」
特許切れ直前に錠剤の形を変え、複数タイプの薬剤を必要以上に卸や薬局に在庫させる
ことで利益を得ているとのこと。

まとめると、製薬会社がOD錠を作るのは、特許切れになりそうな薬についてOD錠を作ることで、
再度特許を取って価格を維持し、医者にOD錠指定をしてもらうことで、先発製薬会社の
売上確保ができるというのが本当の理由のようだ。

処方箋にOD錠指定をすることで医者がどういう利益を得ているのかはイマイチ見えてこないが、
状況から察するに、先発製薬会社から何かしらの利益を得ているのは間違いないだろう。
患者の立場としてはOD錠以外のアレロックを指定したほうがよさそうだ。
追記:2013年3月現在、OD錠に関してもジェネリックが出ているようだ。(薬価サーチより)


アレロックのジェネリックに関して

2012年12月14日に厚生労働省がアレロックを含むジェネリックなどの薬価の追補収載を
行ったようで、それに関して記載をした記事も複数見受けられる。

ミクスonline「GE薬価収載 アレロックに27社、ガスモチンに25社が参入」
医薬関連の記事を主に配信しているミクスonlineの記事。

CBnews「アレロックなど9成分に後発品が初参入」
内容は上記の記事とほぼ同等だが、興味深かったのは厚生労働省が今回の薬価追補収載
に際して決めた新ルールに関してで、初回収載時、収載品目数が10品目を超えた内用薬を
先発品の6割の薬価にする新ルールが適用されたという部分。
アレロックの例だと5mgのものが先発品60.2円なのに対し、後発品が36.1円と、たしかに59.96%
の薬価で約6割の値段になっている。(薬価サーチより)

薬剤師の方の反応は、薬がゾロゾロでてきて、ホント勘弁してくれというもの。業界用語で、
後発のジェネリック薬品のことをゾロというようで、その由来は今回の27社参入のように、
特許が切れると同じ成分の薬がゾロゾロ出てくるからのようだ。特定メーカーのジェネリックを
指定してくる患者もいるので、それらを揃えようとすると、27社分のアレロックの在庫を持つことに
なるのがつらいらしい。

薬剤師りくの勉強三昧「アレロック錠のジェネリック登場」
薬剤師の方の反応。勘弁してくれ、と。ちなみにこの方がMRの方に聞いた情報によると、
アレロックOD錠の処方箋からジェネリックの普通錠への切り替えができるようになったようだ。

みやび日記「アレロック錠の後発医薬品、満を持して発売」
同じく薬剤師の方の反応。大型医薬品だけあって30社を超えるメーカーから発売とか、まさに
ゾロだという反応。