花粉症の点鼻薬 ナザールARのまとめ

花粉症のステロイド点鼻薬(市販薬)のひとつ。成分名はベクロメタゾンプロピオン酸エステル。
元々は医療用の花粉症ステロイド点鼻処方薬であるリノコートパウダースプレーや
アルデシンAQネーザルなどで使われていた成分を市販薬に転用したスイッチOTC薬である。
市販の点鼻薬の中には、即効性はあるものの長期使用により症状が悪化する副作用を持った
「血管収縮剤」を含んだ点鼻薬が多く見られるが、ナザールARに関してはそうした成分は
含まれていない。ここではナザールARの有効成分であるベクロメタゾンプロピオン酸エステルが、
フルナーゼ、ナゾネックス、アラミスト、エリザス等、他のステロイド点鼻処方薬とどう違うのか
という点と、他の市販点鼻薬に多く含まれる血管収縮剤の副作用に関して主に記述することで、
このナザールAR(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)の特徴を明らかにしようと思う。
ちなみにナザールARとナザールでは全然成分が違うので注意。血管収縮剤が成分に
含まれないのはナザールARであり、本ステロイド成分が含まれるのもナザールARである。
※追記で、コンタック(R)鼻炎スプレー<季節性アレルギー専用>も同成分の市販薬なので、
以下の記述はコンタック(R)鼻炎スプレー<季節性アレルギー専用>に関しても当てはまるものと
考えて良い。

ナザールARに関する主な情報

一般名:ベクロメタゾンプロピオン酸エステル
以下、ベクロメタゾンプロピオン酸エステルの詳細な一次情報が記載されている情報源に関し、
同成分を使った点鼻薬剤であるリノコートパウダースプレーの添付文書とインタビューフォームを
載せておく。
ベクロメタゾンプロピオン酸エステルに関する一次情報(添付文書)
ベクロメタゾンプロピオン酸エステルのインタビューフォーム(詳細情報、PDF)

ナザールAR(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)はステロイド点鼻薬である。
一般的にステロイドというと、体内のホルモン生成機能を退化させるような強い副作用を持った
薬であるという印象を持たれているが、ステロイド点鼻薬に関しては体内にほとんど吸収されない
ため、副作用が少ないとされている。ただし、ステロイドの作用の仕方というのは、体の抗体の
反応を弱めることにより炎症を抑えるという効き方をするので、体の抵抗力が著しく弱っていたり、
細菌性の疾患にかかっていたりする場合には注意が必要である。こうした性質のため、元々は
処方箋が必要な処方薬であったという経緯もあり、市販薬となった今でも薬剤師からの説明が
義務付けられている第一類医薬品に指定されている。

薬の強さとしては他のステロイド点鼻処方薬であるフルナーゼ、ナゾネックス、アラミスト、エリザス
などと同等の効力を持っていることが確認されている。ただし、他の処方薬よりも持続時間が
短いため、1日に2~4回も点鼻をする必要があるのが現在主流の処方薬と比較した欠点である。

花粉症の飲み薬として主流となっているアレグラ、アレジオン、ジルテックといった
第二世代抗ヒスタミン薬との比較で言うと、一般的に点鼻ステロイド薬のほうが効果が高い
という結果が出ている。実際欧米では花粉症の対策として、飲み薬の服用よりも点鼻薬の
使用が主体となっている。また、アレグラ、クラリチンを除くほとんどの抗ヒスタミン薬にある
「眠気」の副作用がナザールARなどのステロイド点鼻薬にはないというのもメリットの一つである。

市販の花粉症点鼻薬で選んではいけない「血管収縮剤」について

ナザールARと他の花粉症点鼻市販薬の最も大きな違いは「血管収縮剤」が入っていないこと
である。血管収縮剤というのは一時的に鼻の粘膜を収縮させることで鼻づまりを緩和するという
即効性抜群の薬ではあるのだが、使い過ぎたり、長期使用をすると効かなくなるばかりか、
肥厚性鼻炎(ひこうせいびえん)という、鼻の粘膜が厚くなって慢性的に鼻が詰まってしまうという
厄介な症状に見舞われることになる。なので長期使用はできないし、副作用の影響を
受けやすい7歳未満の小児には使用してはいけないということになっている。

ということで、花粉症の点鼻薬として使用すべきなのは血管収縮剤の入っていない
ステロイド点鼻薬であり、病院では血管収縮剤入りの点鼻薬を処方されることはほぼないはず
なので、病院で点鼻薬をもらうのが間違いがないのだが、市販薬の中で選ぶのであれば、
血管収縮剤の入っていない、ナザールARにするのがよいかと思われる。

ちなみに血管収縮剤とは以下の様な成分を含んでいる薬剤のことを指す。
・塩酸ナファゾリン(ナファゾリン塩酸塩)
・塩酸テトラヒドロゾリン
・テトラヒドロゾリン硝酸塩
・塩酸フェニレフリン
・オキシメタゾリン塩酸塩
・トラマゾリン塩酸塩

わかりやすいように、市販の血管収縮剤入り点鼻薬で使われている表現をできるだけ集めて
みたが、塩酸や硝酸が前に付くか後に付くかは表記の揺れだと考えていただければ良くて、
ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、フェニレフリン、オキシメタゾリン、トラマゾリンの5つの成分の
どれかが市販点鼻薬の成分表記にあったら、それは血管収縮剤だと判断すれば良い。
コールタイジンとか、ナザールスプレー(ナザールARではない。名前が似ているので注意)
などが有名どころだが、大抵の花粉症点鼻市販薬には含まれているという理解でよいかと。

その他ナザールAR、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル関連の記事

その他、参考になりそうな関連記事、参考記事を下記にをまとめるので、気になる方は参考に
していただければと思う。

花粉症の薬、ステロイド点鼻薬の強さ・特徴比較まとめ
ステロイド点鼻薬同士の比較と第二世代抗ヒスタミン薬との比較に関して、治験論文を中心に
できる限りの情報をまとめている。結論としてはステロイド点鼻薬同士の効果はどれも同じで、
ステロイド点鼻薬の方が第二世代抗ヒスタミン薬よりも効果が高いという内容。

上尾中央総合病院「お薬通信No.17」(PDF)
花粉症の点鼻薬に関して端的にまとめられていてわかりやすい。花粉症点鼻薬には
1.粘膜の炎症を抑える薬(ステロイド点鼻薬)・・1~2日で効く
2.アレルギー反応を抑える薬(抗ヒスタミン点鼻薬)・・1週間程度で効く
3.鼻粘膜の充血を抑え、一時的に鼻づまりを改善する薬(血管収縮剤)・・3~5時間で効く
の大きく3種類があって、市販の点鼻薬に多く含まれる血管収縮剤は危険だよということが
まとめられている。

耳鼻科50音辞典「アレルギー性鼻炎 市販点鼻薬(スプレー)の注意」
市販点鼻薬に関する注意がまとまっているページ。主に血管収縮剤に関しての情報で、
成分名に関しても言及している(フェニレフリンが抜けているが)。

あつ花blog「ホントかどうかわからないけどアルデシンAQネーザルが販売中止とか」
ベクロメタゾンプロピオン酸エステルを使用している処方薬「アルデシンAQネーザル」が
発売中止になった理由に関して、コメント欄で薬局勤務の方が理由を記載している。
特にこの成分に重大な副作用があったからというようなことではなく、単に海外で需要がなくなった
ことによる発売中止とのこと。第二世代抗ヒスタミン薬のトリルダンのように、心臓に対する重大な
副作用があって発売中止になったようなケースであれば、事例が公になるはずであり、そうした話が
特にないというのと、こうして現在もOTCの市販薬としてナザールARやコンタック鼻炎スプレーなどで
利用されているという事実を踏まえて考えると、この薬局勤務の方の言うとおりで、副作用がらみの
理由ではないと判断してよいと思われる。