花粉症の点鼻薬 エリザスのまとめ

花粉症のステロイド点鼻薬(処方薬)のひとつ。ナザールAR、フルナーゼ等の古いタイプの
ステロイド点鼻薬と異なり、1日1回の点鼻でよいことと、液ダレしない粉末タイプの薬である
ことが最大の特徴。ただし、効果の高さ自体はフルナーゼ、ナゾネックス、アラミスト等、
他の主要ステロイド点鼻薬と差はない。日本の製薬会社が開発した薬である。

エリザスに関する主な情報

1日薬価:127.8円(1日1回各鼻腔に1噴射づつ) 薬価サーチより
一般名:デキサメタゾンシペシル酸エステル
製造メーカー:日本新薬株式会社
エリザスに関する一次情報(添付文書) (独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
エリザスのインタビューフォーム(詳細情報、PDF)

1日1回の点鼻でよい粉末タイプの薬であることが最大の特徴。効果は他の点鼻ステロイド薬と
同じくらい。点鼻時の粉の量が米粒ほどととても少ないので使った感がほとんどないというのが、
使用感という観点での一番の特徴。これを「使用感がないから効いた気がしない」と感じるか、
使いやすいと感じるかでこの薬に対する好みが分かれるところと思われる。

エリザス、ナゾネックス、アラミスト等点鼻ステロイド薬の比較

ステロイド点鼻薬の中でどの薬が一番強いのか、効果があるのかというのは多くの人が気になる
観点かと思う。結論から書くと、エリザス、ナゾネックス、アラミスト、フルナーゼ等、現在処方が
なされているステロイド点鼻薬の間で有意な差というものは確認されていない。つまり、効果は
どれも同じということだ。ステロイド点鼻薬の比較に関しては、主にフルナーゼを比較薬剤として、
フルナーゼよりも効果が高いかどうか、鼻症状スコアと呼ばれるくしゃみ回数、鼻水、鼻づまり、
鼻のかゆみの4つの項目に対して患者に4段階で評価をしてもらい、使用前、使用後でどれだけ
その数値が下がったかというやり方で行われることが多い。その結果はいずれも非劣性であり、
フルナーゼに劣るものではないが、フルナーゼよりも有意に優れているという結果も出せていない。
このへんの詳細に関しては下記記事にインタビューフォームや治験論文含めて確認できるだけの
情報はまとめたので、詳細を確認したい方はご参照いただければと思う。
花粉症の薬、ステロイド点鼻薬の強さ・特徴比較まとめ

上記効果・強さの比較に関する結論を述べたところで、あとは主に使用感に関する比較ということに
なる。これらに関しては、まず1日2回以上の点鼻が必要か、1日1回でよいかで薬が分かれる。

・1日2回以上の点鼻が必要
フルナーゼ
リノコート、アルデシンAQネーザル、ナザールAR

・1日1回の点鼻で良い
エリザス
ナゾネックス
アラミスト

基本的には1日1回タイプの薬のほうが使い勝手が良いという評価で、これらの薬が処方の
主流になっている。ただし、ナザールARは市販薬として購入ができ、フルナーゼはフルチカゾン
というジェネリック薬品があるので安価に処方してもらうことが可能、という点もあるので、
1日2回以上タイプの古い薬にも古い薬なりのメリットはあるということだ。

1日1回タイプの薬であるエリザス、ナゾネックス、アラミストに関する特徴比較は以下のとおり。

・エリザス
粉末製剤で無味・無臭・防腐剤なしなので点鼻時の刺激がほとんどない
鼻からの液ダレや口に垂れて苦味を感じたりすることがない
昔はカプセルをツインライザーにセットするという面倒な仕様だったが、現在はカプセルセットの必要がないタイプに改善されている
小児適応はなし
1日薬価が127.8円と、1日1回タイプのステロイド点鼻薬の中では一番安い(ナゾネックス137.7円、アラミスト145.7円) 

・ナゾネックス
オーソドックスな点鼻容器で使い勝手が良い
バイオアベイラビリティというステロイドの副作用につながる薬の血中移行が最も低い(0.2%未満、アラミストは0.5%、エリザスは情報なし)
以前は薬剤に特有の匂いがあったが、現在は無臭になっている
3つの薬剤の中で一番シェアが高い薬剤(2012年1-3月売上46億円、アラミスト30億円、エリザス4億円)
小児適応は3歳以上

・アラミスト
薬の効きが他の点鼻薬よりも早い(フルナーゼは2日なのに対してアラミストは1日で効く。ナゾネックス、アラミストに関してはこの比較を行っていない)
眼のアレルギー症状にも効く(原因ははっきりとはわかっていない)
スプレーのレバーが横にあり、力を入れないと容器を押しにくいという評判が多い
小児適応は2歳以上

他、薬剤の比較に関して参考になるソースを下記に挙げる。

薬剤師のお勉強ノート「1日1回使用の鼻噴霧ステロイドの特徴」
薬剤師の方が1日1回タイプのステロイド点鼻薬であるナゾネックス、アラミスト、エリザスについて
まとめている。また日本では欧米と比べてステロイド点鼻薬の利用率が格段に低いことにも
触れている。ナゾネックスはオーソドックスな容器、アラミストは横押し容器で眼にも効き、
エリザスは粉末なので粘膜に染みて痛くなるなどの刺激がないとのこと。ちなみにこの方が
書いているバイオアベイラビリティに関してだが、これは薬剤がどれだけ体に吸収されるかの
指標となる概念。例えば点鼻ステロイドでこれが高いものがあったりすると、ステロイドが体に
吸収されるということなので、全身の免疫力が低下したり、副腎皮質のホルモン生成機能が退化
してしまうなどの副作用が起きることになる。バイオアベイラビリティの比較で言うと、
ナゾネックスが0.2%未満、アラミストが0.5%、エリザスはインタビューフォームにも人に関する情報は
なしで、フルナーゼは1%未満ということでいずれも非常に少ない。

きおくのーおと「エリザス点鼻薬が良すぎる」
一使用者の感想としてのエリザスの使用感がわかりやすく書かれている。
1日に何回も噴霧しなければいけない従来型のステロイド点鼻薬はかなり面倒なようだ。
例えば出かけているときに忘れがちになるなど。ナゾネックスは1日1回タイプだが、液体タイプだと
今度は口に流れてまずっとなるのでこの方は粉末タイプであるエリザスを推しているようだ。

薬剤師の脳みそ「エリザス点鼻粉末」
薬剤師の方のエリザス感想記事。ツインライザータイプだった頃のエリザスは使っているときの
周囲の目が気になり、抵抗がある人が多かったとのこと。ドライパウダーの点鼻薬のメリットとして、
鼻から液がたれず、口の中に変な味が広がらないところを挙げている。また、同じパウダータイプの
点鼻ステロイドであるリノコートパウダースプレーとの比較で言うと、点鼻時のパウダーの量が
エリザスのほうが少ないので、リノコートのように鼻がカピカピに乾燥したり、粉が鼻から落ちる
というようなことも少ないとのこと。ちなみに効果自体はリノコートとエリザスで特に差はない。

いろは薬局「勉強会報告書」
調剤薬局の薬剤師の方が、エリザスの開発発売元である日本新薬の方が行ったエリザス勉強会
に関する報告書を記載している。主にはエリザスの1回の噴霧量は米粒ほどなので使用感が
ほとんどないというところをポイントとして挙げている。女性の方は「薬を使った感」 がない方が
好みの人が多いとのこと。また同じ1日1回タイプのナゾネックスやアラミストよりもリピーターが
多いらしい。「使った感がない」のが好きかどうかは患者によるので、これをよいと思うか、
使った感がないから効いている気がしないと感じてしまうかがこの薬の選択の分かれ目になりそう。

どうなの?調剤薬局の薬剤師に聞いてみよう!!「エリザス点鼻粉末が今年人気な件」
薬剤師の方が書いているエリザスに関する記事。この方は最近エリザスが人気と医薬品卸の
方から聞いていると書いているが、直近2年のエリザス売上実績で言えば2012年1-3月は4.5億、
2013年1-3月は2億なので、2013年の花粉が少なかったこともあるが顕著に売上が伸びているという
感じではない(ちなみに2012年1-3月の他の薬の売上はナゾネックスが46億、アラミストが30億)。
ツインライザー時代のエリザスは噴霧器にカプセルをセットしなければならず、毎回患者に
「カプセルは飲まないでください」と注意していたとのこと。処方する側から見て使用対象とする
患者の選択が難しい薬だったようだ。粉末製剤のメリットしてこの方は、液ダレがないことの他に、
鼻が詰まっていても粒子が回りこんで鼻の奥まで届くという点を挙げている。また個人的な感想
として、使った感じがしないので物足りないという点も挙げている。

薬剤師4コマ劇場R2「点鼻薬比較」
1日1回点鼻薬のナゾネックス、アラミスト、エリザスに関する簡単なまとめ。
ナゾネックスはスプレーしやすく、アラミストは眼にも効き液ダレが少なく、エリザスは粉末なので
ムズムズしないとのこと。エリザスはツインライザー時代のちょっと古い情報。

花粉症になった時の治療・病院・薬について語る 7
掲示板情報だが、花粉症の薬の売上順位が記載されているのが興味深い。
2012年1-3月売上高ランキング
内服薬
1位 アレグラ 196億円
2位 アレロック 105億円
3位 クラリチン 69億円
4位 アレジオン 63億円
5位 タリオン 59億円
6位 ザイザル 55億円
7位 ジルテック 51億円
8位 エバステル 22億円

点鼻薬
1位 ナゾネックス 46億円
2位 アラミスト 30億円
3位 フルナーゼ 20億円
4位 リノコート 5億円
5位 スカイロン 4億円
6位 エリザス 4億円
7位 アルデシン 2億円
8位 リボスチン 2億円

点眼薬
1位 パタノール 50億円
2位 リボスチン 20億円
3位 リザベン 10億円
4位 インタール 6億円
5位 ゼペリン 5億円
6位 ザジテン 5億円
7位 アイピナール 2億円
8位 アレギサール 2億円

おそらくだが、ソースはアイ・エム・エス・ジャパン株式会社のデータを元にしているのではないかと
思われる。基本的に海外の製薬会社は日本市場における薬剤別売上を公表していないので、
こうしたデータ集計機関から医療関係者が情報を得ているものと想定される。
ちなみにエリザスは日本新薬株式会社という日本の製薬会社が開発した薬なので、決算情報に
薬剤別の売上記載がある。
日本新薬株式会社「決算情報」
これによるとエリザスの売上は2012年1-3月の売上は4.5億、2013年1-3月の売上は2億とのこと。
上記掲示板情報の2012年売上が決算情報と一致しているので、他の薬の売上に関しても
ある程度根拠を伴った情報であると推測してよいかと思う。


エリザスと同じ成分の市販薬について

「エリザス 市販薬」のようなワードで情報を検索してくる方が多いので記載しておくが、エリザスは
処方箋が必要な処方薬であって、市販薬はない。他のページでも何度か書いているのだが、
基本的に市販薬よりも処方薬の方が良い薬が多い上に、保険適用で安くなるため、病院に
行くことをおすすめする。

ただし、どうしても花粉症時期に何時間も病院で待つのが嫌というような理由で同種の薬が欲しい
ということであれば、ナザールARまたはコンタック(R)鼻炎スプレー<季節性アレルギー専用>
という2つの市販薬だけはステロイド点鼻薬になるので、それを選ぶのがよいであろう。
効果自体はエリザスと差はないが、効果時間が短いので、1日に2~4回点鼻しなければならない
のが、1日1回ですむエリザスとの主な違い。詳細は下記の記事を参照。
花粉症の点鼻薬 ナザールARのまとめ
花粉症の薬、ステロイド点鼻薬の強さ・特徴比較まとめ


その他、エリザスに関するネットの話題

デキサメタゾンシペシル酸エステルのスギ・ヒノキ花粉症に対する第2世代抗ヒスタミン薬との併用効果および患者使用印象の検討(PDF)
エリザスとアレグラの併用に効果があるのかどうかに関する治験論文。
「鼻アレルギー診療ガイドライン」では飲み薬である第二世代抗ヒスタミン薬とステロイド点鼻薬の
併用が中等症以上の花粉症患者に対して推奨されているが、実は併用のほうが単独使用よりも
効果があるということは示されていない。この治験論文ではスギ・ヒノキ花粉症患者に対して、
飲み薬のアレグラ単独投与、エリザス単独投与、アレグラとエリザス併用の3つのグループに分け、
鼻症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)の評価をしてもらうことにした。
その結果、アレグラ単独投与のグループよりエリザス単独投与のグループのほうが症状が
有意に改善されたが、エリザス単独投与グループとアレグラ・エリザス併用のグループでは
有意な差が見られないという結果になった。ちなみにこのような結果は点鼻ステロイド薬の
ナゾネックスと第二世代抗ヒスタミン薬の飲み薬クラリチンでも同様の結果が出ている。
すなわち、ナゾネックス単独のほうがクラリチン単独よりも効くが、ナゾネックス単独と併用では
有意な差が確認されなかったということだ。詳細は下記治験論文を参照。
Clinical benefits of combination treatment with mometasone furoate nasal spray and loratadine vs monotherapy with mometasone furoate in the treatment of seasonal allergic rhinitis.(英語)

日本新薬「粉末鼻噴霧用ステロイド薬アレルギー性鼻炎治療剤「エリザス®カプセル外用400μg」新発売のお知らせ」
日本新薬「粉末噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤「エリザス®点鼻粉末200㎍28噴霧用」新発売のお知らせ」日本新薬からのエリザス発売開始情報。カプセルを毎回セットするツインライザータイプは
2009年12月11日から、カプセルセットが不要な片鼻づつ噴霧するタイプを2012年06月05日より
発売開始している。特徴として1日1回タイプの国内初の粉末点鼻ステロイド薬であることと、
防腐剤を含まない粉末製剤なので刺激が少ない(しみたりしない)という点を主に訴求している。

薬局のオモテとウラ「両鼻同時噴霧が可能なエリザスカプセル」
現在は毎回カプセルをセッティングが面倒なため主流ではなくなったツインライザータイプの
エリザスの使い方の説明が詳しい。

一般社団法人日本アレルギー学会「睡眠前の点鼻ステロイド剤長期投与が原因と思われた食道カンジダ症の一例」
点鼻ステロイドの副作用の事例として紹介。点鼻ステロイドは局所的に作用するので、副作用が
少ないとは言われているが、抗体の力を弱めて炎症を抑えるというステロイドの性質上、このように
長期使用が原因で細菌や真菌の繁殖を許してしまうというデメリットも存在する。

はまだクリニックのブログ「鼻水が止まらない」
医師の方によるアレルギー性鼻炎用点鼻薬に関する分類・使い分けに関する記事。
点鼻薬に関して俯瞰的に説明していて参考になるかと。エリザスに関しては鼻への刺激が少ない
という点を特徴として挙げている。

菊地医院「花粉症について」
エリザスに関する情報はごく一部だが、花粉症全般に関して原因から薬、治療法の分類に至るまで
かなり網羅的にまとめられているので、花粉症について俯瞰的に知りたい人は一度見てみても
よいかもしれない。

◆◆◆ 花粉症 ◆◆◆
花粉症の人が医者に行くと「鼻アレルギー診療ガイドライン」というものを見せられながら説明を
受ける人もいると思うが、その重要な表がまとまっているので参考までに。基本的には軽症の
人には第二世代抗ヒスタミン薬が中心で、症状がひどい場合は点鼻ステロイド薬も併用する
というのが日本でのオーソドックスな治療方針。

アレルギー情報センター「鼻アレルギーガイドライン」
アレルギー対処に関するガイドライン。特に花粉症の薬の分類が詳しいので参考になるかと。