方が圧倒的におすすめである。
理由は、まず市販薬よりも処方薬のほうが良い薬、つまりよく効いて副作用が少なくて、
効き目も長いから服用回数が少ないというような薬が多いからだ。なぜなら市販薬というのは、
特許切れになった古い薬がOTCとして回ってくるという仕組みになっているからだ。
もう一つは、処方薬のほうが診察料を含めても圧倒的に安いからだ。花粉症のシーズンは
ピークが3月から4月にかけてなので、大体2ヶ月位くらい薬を使うことになるが、その長さだと、
初診料・診察料含めても、処方薬だと市販薬の大体半額で済む。市販薬で1万円程度かかる
ところが処方薬だと5千円前後で済むということだ。価格比較の詳細は下記記事を参照。
花粉症の薬を病院で処方してもらうといくら掛かるのか計算してみる
なので、基本的には医者に行ってザイザルとナゾネックスあたりを処方してもらうのがよいと
思うのだが、中には医者で何時間も待つのが嫌という人もいると思うので、そういう人のために
一応市販薬の中でのおすすめを記載しておこうと思う。
結論を最初に書いておくと、極力眠気がない組み合わせがよい人はアレグラFX+ナザールARで、
効果を重視する人はコンタック鼻炎ZまたはストナリニZとナザールARの組み合わせになるかと。
では順を追って説明する。
医者で処方される花粉症の薬の組み合わせは第二世代抗ヒスタミン薬と点鼻ステロイド薬
花粉症の薬でよく言われる「眠くなる」副作用は第1世代抗ヒスタミン薬と呼ばれるものの影響である。これは例えばエスタック鼻炎カプセル、ストナリニSなどに含まれている成分だ。
理由は脳に薬の成分が届き、脳の伝達物質の働きを阻害してしまうためだ。
そうした副作用を緩和した薬剤が第二世代抗ヒスタミン薬と呼ばれるものだ。
花粉症で医者に行った時にまず処方されるのがこの第二世代抗ヒスタミン薬である。
以前は処方薬にしかなかったのだが、最近はOTCとして市販されるようになってきた。
市販薬の中で薬を選ぶ際には、この第二世代抗ヒスタミン薬の中から選ぶのがよいかと。
ちなみに市販薬の中ではどんなものがあるかというと、アレグラFX、アレジオン20、
エバステルAL、コンタック鼻炎Z、ストナリニZ、ザジテンAL鼻炎カプセルがある。
ただしザジテンは眠気が特に強いことで有名なので、選択から除外をしたほうがよいだろう。
もうひとつ、症状がさらにひどいと処方されるのが点鼻ステロイド薬と呼ばれるものである。
これは、体の免疫機能を弱めることで、くしゃみ、鼻水などの免疫反応を弱める薬である。
ステロイドというと危険なイメージを持っている人もいるだろうが、点鼻ステロイド薬は
局所的に作用するもので、体内にはほとんど吸収されない(1%未満)ことが確認されている。
また、第二世代抗ヒスタミン薬よりも効果が高いので、欧米では広く使われている。
症状がひどい人は合わせて使用するとよいであろう。
市販薬ではナザールARとコンタック(R)鼻炎スプレー<季節性アレルギー専用>いう薬が
点鼻ステロイド薬に該当する。
逆に非推奨なのが、ナザールARとコンタック(R)鼻炎スプレー<季節性アレルギー専用>以外の
点鼻薬で、ほとんどすべての薬に血管収縮剤というものが入っている。これは一時的に血管を
収縮させることで鼻の通りを良くする薬なのだが、副作用として、長期利用をすると鼻の粘膜を
厚くし、慢性的に鼻を詰まらせるようになってしまうのだ。ナザールAR以外は、例えば名前の似た
ナザールスプレーなども血管収縮剤が入っているので、これらは使用すべきではない。
このへん、詳細を知りたい方は下記の記事を読むとよいであろう。
花粉症の薬、第二世代抗ヒスタミン薬の強さ・眠気比較まとめ
花粉症の薬、ステロイド点鼻薬の強さ・特徴比較まとめ
花粉症の点鼻薬 ナザールARのまとめ
市販薬の第二世代抗ヒスタミン薬の違いとおすすめ
市販薬の中で花粉症の薬を選ぶ際には、第二世代抗ヒスタミン薬の中から選ぶのがよいと先ほど記載したが、ではその中では何がよいのかという話になるかと思う。
第二世代抗ヒスタミン薬の中でもそれぞれの薬で特徴が異なるので簡単に記載を
しておこうと思う。
まず、大きな違いとしては、薬の強さと眠気の強さがある。上記ポジショニングマップは
処方薬の薬剤名で記載をしたものだが、市販薬の薬剤名に直すと、
・効果も眠気も強めの薬
コンタック鼻炎Z、ストナリニZ(処方薬名はジルテック)
※コンタック鼻炎ZとストナリニZは有効成分量も値段も全く同じなのでどちらを選んでも変わらない
・効果も眠気も中くらいの薬
アレジオン20(処方薬名はアレジオン)
エバステルAL(処方薬名はエバステル)
・効果も眠気も弱めの薬
アレグラFX(処方薬名はアレグラ)
となる。なお、アレジオンとエバステルの違いは、アレジオンは速く効き、エバステルは
効き始めるのは遅いが、一旦効くと長く効くという特徴がある。詳細は下記を参照。
第二世代抗ヒスタミン薬の効果比較論文の翻訳を試みる
アレグラに関しては、処方薬としても一番売れている薬で、眠気の副作用がないことが
ワープロ入力試験と自動車運転能力の試験において、ニセの薬との差分が生じなかった
ことによって確認されている。交通業務従事者に関しては市販薬では唯一の選択肢になる。
ジルテックに関しては、数々の治験論文で、アレグラよりも強い薬であることが示されて
いるが、眠気の副作用も第二世代抗ヒスタミン薬の中では強めであることも指摘されて
いる。最近ではジルテックの中に半分含まれている、効果が低く、眠気の強い成分を
取り除いたザイザルという薬が出ているが、これは市販薬はなく処方薬しかない。
ちなみにコンタック鼻炎ZとストナリニZは、有効成分量も値段も同じなのでどちらを選んでもよい。
なお、処方薬と市販薬の違いとして、アレグラFXとコンタック鼻炎Z、ストナリニZ、アレジオン20は
それぞれ処方薬と有効成分は同量含まれ、エバステルALに関しては、処方薬の半分の有効成分
となっている。
それぞれ各薬に関する詳細が知りたい場合は下記を参照。
花粉症の処方薬/市販薬 アレグラのまとめ
花粉症の処方薬/市販薬 アレジオンのまとめ
花粉症の処方薬/市販薬 エバステルのまとめ
花粉症の処方薬/市販薬 ジルテックのまとめ
なお、処方薬で人気のザイザルはジルテックに半分含まれている眠気成分を取り去った薬であるが、
市販薬はないので、この薬にしたい人は病院に行くべき。ザイザルの詳細は下記参照。
花粉症の処方薬 ザイザルのまとめ
それぞれ花粉症の市販薬の服用回数と価格比較は下記の通り。
眠気の副作用が強いザジテンを除いて考えると、1日辺り130円~180円程度で、
一番安いのはアレグラFX、一番高いのはストナリニZとコンタック鼻炎Z。
ザジテンは一応第二世代抗ヒスタミン薬に含まれるので参考までに記載したが、
眠気が特に強いことで有名なので非推奨。
商品名 | 価格(税抜) | 容量 | 服用回数 | 1日薬価 |
エバステルAL | 2000円 | 12錠 | 1日1回 | 166.6円 |
アレグラFX | 1886円 | 28錠 | 1日2回 | 134.7円 |
アレジオン20 | 1980円 | 12錠 | 1日1回 | 165円 |
コンタック鼻炎Z、ストナリニZ | 1791円 | 10錠 | 1日1回 | 179.1円 |
ザジテンAL鼻炎カプセル | 2000円 | 20錠 | 1日2回 | 200円 |
市販薬の花粉症点鼻薬のおすすめと選んではいけない薬
第二世代抗ヒスタミン薬を使っても効果が薄い場合、点鼻ステロイド薬と併用するという選択肢がある。処方薬ではいろいろあるのだが、市販薬では現在ナザールARか
コンタック(R)鼻炎スプレー<季節性アレルギー専用>になる。
効果自体は処方薬との差はないのだが、処方薬のナゾネックス、アラミスト、エリザスなどが
1日1回でよいのに対し、ナザールARとコンタック(R)鼻炎スプレー<季節性アレルギー専用>の
場合は、1日2~4回も使う必要があるため、はっきり言って少々面倒くさいと思う。再度書くが、
市販薬の点鼻ステロイド薬はナザールARとコンタック(R)鼻炎スプレー<季節性アレルギー専用>
だけであり、ナザールスプレーなど、他の似た名前の薬も点鼻ステロイド薬ではないので注意。
また、他のほとんどの花粉症用点鼻市販薬に関しては、血管収縮剤という慢性的な鼻づまりを
起こす重大な副作用を抱えた成分を含んでいるので推奨しない。詳細は下記を参照。
なお、ステロイド点鼻薬に関しては眠気の副作用はない。
花粉症の点鼻薬 ナザールARのまとめ
市販薬の花粉症用目薬のおすすめと点眼薬の分類について
花粉症用の目薬に関しては、大きく3種類の薬がある。ステロイド点眼薬、抗ヒスタミン点眼薬、そしてケミカルメディエーター遊離抑制薬である。一番効果が高いのはステロイド点眼薬であるが、
眼圧上昇からの緑内障にかかるリスクや、抵抗力低下によるウイルス・カビ等に起因する角膜炎に
かかるリスク等、注意を要する副作用があるため長期使用ができず、また眼科でしか処方ができない。
そのため、花粉症の点眼薬として主流なのは、次に強い抗ヒスタミン点眼薬であり、次いで
ケミカルメディエーター遊離抑制薬の順番になる。主な薬と強さ、目への刺激性の分類は下記の通り。
医者で主に処方されるのは、パタノール、リボスチン、リザベン、インタールなどであるが、
市販の点眼薬でいうと、しみない抗ヒスタミン薬の分類に相当する部分の目薬がないため、
おすすめとしては、しみるけれども処方薬のザジテン点眼液と同成分同用量のザジテンALか、
抗ヒスタミン薬より弱いがしみない点眼薬である処方薬リザベンと同成分同用量の目薬である
アルガードプレテクトになる。詳細については下記を参照。
花粉症の目薬・点眼薬の強さ・特徴比較まとめ
その他花粉症の市販薬について
他、眠くならない花粉症薬という観点では、漢方の小青竜湯も選択肢にはなりうる。民間療法に関しては、根拠に乏しい物が多いため、基本的にこのサイトで取り上げる気は
ないのだが、小青竜湯に関しては、偽の薬と比較をして、たしかに花粉症の症状の改善に
寄与したとのデータがあるので、気休めではなく医薬品としての効果が期待できる。
なお、効果は第二世代抗ヒスタミン薬と同等程度とのこと。詳細は下記参照。
花粉症の民間療法 小青竜湯のまとめ
ということで、まとめとしては、
症状がひどいならコンタック鼻炎ZかストナリニZとナザールARかコンタック(R)鼻炎スプレー
<季節性アレルギー専用>の組み合わせで、眠気がないものを選ぶならアレグラFXと
ナザールARかコンタック(R)鼻炎スプレー<季節性アレルギー専用>の組み合わせになる。
その他、花粉症の市販薬に関して、人によっては必要と思われる情報を下記にまとめておく。
コンタック鼻炎ZとストナリニZの違いについて
ちょっと「コンタック鼻炎ZとストナリニZの違い」みたいなワードで検索してくる人が多くて驚いてしまった。改めてはっきり書いておくが、コンタック鼻炎ZとストナリニZは全く同じ薬だ。
有効成分の量も、値段も全く同じで何の違いもない。コンタック鼻炎Zはグラクソ・スミスクライン社、
ストナリニZは佐藤製薬が製造販売しているという、会社が違うから商品名が違うだけの話。
ちなみにそれぞれの商品名の最後に付いているZはジルテック(Zyrtec)のZだ。
ジルテックというのはこの成分の薬を、医者が処方薬として出すときの薬剤名。
製薬会社はよく効くと自信を持って出す薬の名前に、これが最後の薬だ、という意味を込めて、
Zを付けたがるというのが風習というか、彼らの文化。
アレジオン10とアレジオン20の違いについて
2016年の花粉症シーズンからはアレジオン20が発売されており、薬局でも置いてあるのは主にこれになっていると思うが、それ以前はアレジオン10という薬のみが発売されていた。
2つは何が違うのかというと、単純に有効成分の量が違う。
まず、アレジオン20は、処方薬のアレジオン錠20と同じく、有効成分のエピナスチン塩酸塩が
1錠中に20mg含まれている。つまりアレジオン20は医療用アレジオンと同量の有効成分ということ。
一方アレジオン10はエピナスチン塩酸塩が1錠中に10mg含まれている。つまり医療用アレジオンの
半分の有効成分ということである。
では、アレジオン20とアレジオン10、どちらが効くのか、というのが使う人の一番気になるところだろう。
結論として、アレルギー性鼻炎に対する効果は、アレジオン10でもアレジオン20でも変わらない
ことが、インタビューフォームという薬の専門文書に記載がされている。
もう少し詳細に書いておくと、通年性アレルギー性鼻炎では有効性、安全性、有用性のいずれに
おいてもアレジオン20とアレジオン10で有意差は見られなかったが、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎などでは、
20mgの投与を行った方がより効いたというものである。つまりは処方薬のアレジオン錠20というのは、
皮膚のアレルギー症状のためにある薬で、花粉症に対してはアレジオン錠10でも十分というのが、
実際に比較を行った治験結果なのである。
ただ、安全性が変わらないなら、有効成分の多い方を処方したいと考える処方する側の感情も、
症状によっては有効成分の多いほうが効くものもあるなら、有効成分が多い方を飲みたいと
考える患者側の感情も理解できるところであろう。実際、花粉症治療の現場でもアレジオン錠20を
処方されるケースが多いようである。
そういった事情もあり、当初は花粉症用ということで、アレジオン10のみがOTCの市販薬として
認可されていたが、おそらくは販売側がマーケティング的な観点で調整を行ったのだろう。
2015年12月より、医療用のアレジオン錠20と同用量のアレジオン20が販売されるに至ったわけである。
なお、市販薬のアレジオン20に関しては、あくまで用途がアレルギー性鼻炎に限られており、
皮膚のアレルギーや、気管支喘息などの用途に関しては記載がされていない。成分は同じでも、
「いや~肌が蕁麻疹で痒くて」という人に、市販薬のアレジオン20を薬剤師は売ってはいけないのである。
このように、同成分同用量でも、処方薬と市販薬で記載されている効果・効能や、用途が異なる
といったことはしばしばあるのである。アレジオンに関して詳しく知りたい方は、下記にも情報を
まとめたのでご参照いただければと思う。
花粉症の処方薬/市販薬 アレジオンのまとめ
子供用の花粉症市販薬について
結論から書くと、第二世代抗ヒスタミン薬の市販薬に関しては小児適応のあるものはひとつもない。なお、医薬品の定義では小児とは15歳未満を指す。ということで、すべての薬で服用可能なのは
15歳以上という条件が付いている。ただし、同成分の処方薬に関しては小児適応があるものも
あるので、つまりは医者で薬をもらいましょうという結論になる。市販薬と同成分の処方薬の
小児適応状況をまとめておこう。
エバステル・・・小児適応なし
アレグラ・・・処方薬の錠剤は7歳以上使用可。ドライシロップなら3歳以上に使用可
アレジオン・・・処方薬の錠剤は小児適応なし。ただしドライシロップは2歳以上に使用可
ジルテック・・・処方薬の錠剤は7歳以上に使用可。ドライシロップなら2歳以上に使用可
ということで市販薬では子供用の薬(つまり小児適応を獲得しているもの)がなくても、処方薬では
錠剤に含まれる有効成分量が少ないタイプの薬があったり、ドライシロップ、つまり粉薬の形状が
あることにより服用量を調整できることから小児適応を獲得しているものが多数あることがわかる
だろう。特にアレジオンのドライシロップは小児科で長く使用されており、実績があるようである。
何度も記載をしているが、基本的に市販薬よりも、医者の指導のもとで処方される処方薬のほうが
良い薬が多く、同じ薬でも用途が広かったりするので、基本的に医者で薬をもらうほうが患者側の
メリットが大きいと思われる。