2010年に認可された新しい薬で、1日1回の服用でよいのが特徴。
グラクソ・スミスクライン社がそれまで発売していた花粉症薬のジルテックを改善した薬で、
強い薬であるジルテックと同等の効果を持ちつつ、ジルテックよりも眠気が少ない。
ザイザルに関する主な情報
1日薬価:121.9円(1日1錠) グラクソ・スミスクラインHPより一般名:レボセチリジン塩酸塩
製造メーカー:グラクソ・スミスクライン
ザイザルに関する一次情報 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
グラクソ・スミスクライン株式会社「ザイザル開発の経緯」(internet archiveより)
ザイザルの開発元のグラクソ・スミスクライン社による開発の経緯の説明。
ザイザルの特徴として、吸収がよく、効果の発現が速い点、薬効が24時間続く(1日1回の服用
でよい)点、ジルテックの2倍の強さ(ヒスタミンH1受容体への親和性)を挙げている。
2001年にドイツではじめて承認され、日本では2010年10月に承認されたとのこと。
ザイザルとジルテックの違いについて
※当初ジルテックの方に本項目を記載していたが、ザイザルの情報を探している人にも必要な情報と判断したので、こちらにも転記をすることにする。
ザイザルは元々内部的に「スーパージルテック」と呼ばれていた薬で、一言で言うとジルテック
から眠気の成分を取り去ったものなのだが、ここでは構造の違いに関して詳しく説明をしようと
思う。まず、それぞれの成分名の正式名称を見てみよう。
ジルテック:セチリジン塩酸塩
ザイザル:レボセチリジン塩酸塩
このレボセチリジンというのはセチリジンの1種なのだ。
セチリジンは下記のようにレボセチリジンとデキストロセチリジンの2種類で構成されている。
左端の水素原子(H)のくっつき方が違う。レボセチリジンの方は太線、すなわち、手前側に水素
原子があり、デキストロセチリジンは点線、すなわち、奥側に水素原子がある。
このレボセチリジンとデキストロセチリジン、構造は似ている(というか構成元素は同じ)にも
関わらず、薬理的な性質がまるで違う。下記論文によると、24人の被験者にヒスタミンを投与
して、鼻の中の通りを悪くしてからレボセチリジン、セチリジン、デキストロセチリジンの3つを
投与する実験をしたら、レボセチリジンとセチリジンは鼻の通りが良くなったが、デキストロ
セチリジンに関しては全く良くならなかったとのこと。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11284803 (英文、論文のサマリーのみ)
下記の医師の方々が書いている情報によると、レボセチリジンはデキストロセチリジンの30倍
ヒスタミンH1受容体への親和性が高いとのこと。つまりはレボの方が30倍効果が高いとのこと。
スズケン「アレルギー性疾患治療薬 レボセチリジン塩酸塩」
住吉皮膚科ブログ「アレロック錠とジルテック錠に新薬!?」
ちなみにデキストロの方は脳にも届くので眠くなる。なので、ざっくり言ってしまうと、ジルテック
の有効成分の半分は、抗ヒスタミン効果があまりなく、眠くなる物質を含んでしまっていることに
なる。
ジルテックとザイザルの違いについて結論をまとめると、ザイザルはジルテックの中の光学異性体
の一方のみを取り出したもので、眠気があり効き目がない一方のみを排除している、ということ。
ザイザルとアレグラ等、他の第二世代抗ヒスタミン薬との比較
ザイザルとアレグラなど他の第二世代抗ヒスタミン薬との比較に関しては、臨床データや医療関係者の意見を総合すると、上記ポジショニングマップのように、
ザイザル、ジルテック、アレロックは強い薬、アレグラ、クラリチンは弱い薬という結論になる。
基本的に強い薬ほど眠気も強くなるが、ザイザルに関してはジルテックの眠気の副作用を
改善したものになるため、眠気がアレロック、ジルテックに比べて少ないという位置づけだ。
こちら、下記で詳しくまとめたので、詳細に関してはそちらをご参照いただきたい。
花粉症の薬、第二世代抗ヒスタミン薬の強さ・眠気比較まとめ
ザイザルと同じ成分の市販薬について
ちょっとこのワードでの検索してくる人をかなり見かけたので答えを書いておく。ザイザルは病院での処方箋が必要な処方薬であって、市販薬はない。
ただ、市販薬で似たような薬はないのかと言えば、あるにはある。
ザイザルの前身の薬であるジルテックの市販薬、コンタック鼻炎ZとストナリニZだ。
どちらも処方薬のジルテックと有効成分の量は同じ。
ザイザルとジルテックでは薬の効果自体に差はないものの、ジルテックの方が眠気が強くなる
という点は市販薬ということで受け入れるしかない。それが嫌なら病院で診察を受けて、
ザイザルを処方してもらうべき。市販薬の第二世代抗ヒスタミン薬の比較説明も下記の記事で
行っているので気になる方はご参照いただきたい。結論だけ書いておくと、効果を求めるなら
コンタック鼻炎ZかストナリニZを、眠気の少なさを求めるならアレグラFXにするのがよい。
花粉症の薬、第二世代抗ヒスタミン薬の強さ・眠気比較まとめ
花粉症の市販薬のおすすめまとめ
ちなみに、2週間しか薬を飲まないのであれば市販薬と処方薬であまり値段は変わらないが、
1ヶ月以上薬を飲むつもりなら処方薬のほうが診察料(初診料)含めても全然安くなるので、
基本的には病院で処方薬をもらうほうがよい。詳細は下記の記事をご参照いただければと。
花粉症の薬を病院で処方してもらうといくら掛かるのか計算してみる
ザイザルに関するネットでの主な評判
ネットで検索できる主なザイザルに関する評判をまとめてみた。医師、薬剤師、服用者の主な声を総合すると、ザイザルは眠気が少ないといわれる
アレグラやクラリチンよりも効き目は強いが眠気もあるという評価。
新薬なため、最長2週間の処方しかできず、他の薬のように1ヶ月などの長期処方が
できないのも欠点。
→(追記)この点は2013年3月現在解消されているようだ。私自身30日分のザイザルを
手に入れている。
1日1回の服用でよいので使いやすく、アレグラよりも1日辺りの薬価が安いのが利点。
こやの皮フ科院長ブログ「ザイザルvsアレグラ 」
ザイザル同様、眠くならない花粉症対策薬として有名なアレグラとの比較をしている皮膚科の
先生の書いた記事。アレグラは1日2回、ザイザルは1日1回の服用という点をあげ、1日あたりの
薬価や飲み忘れが少ない点からザイザルのほうが優れているとの評価。
経験ではアレグラもザイザルも眠気を訴えた患者はいないとのこと。
ジルテックとザイザルの関係を玄米と精白米の関係に例えて、美味しい部分を抽出したという
表現をしていたのがわかりやすい。
再生不良性貧血になっちった!「ザイザルのこと」
ザイザルを服用している方の感想。この方もアレグラとザイザル、ジルテックとの飲んだ上での
比較をしている。アレグラは眠くならないがザイザル、ジルテックよりも効き目が弱い。
ザイザルはこの方はジルテックほどではないが、眠くなるとのこと。
アレグラにはないが、ザイザルには薬に「運転注意の文言」があるとのこと。
ザイザルは新薬なので最長2週間までの処方しかできない点もデメリットとして挙げている。
旭川の薬剤師道場(ブログ)「ザイザル錠5mg」
薬剤師の方がザイザルに関して書いたブログ。主にザイザルとジルテックの違いに関する
説明が詳しい。ザイザルとジルテックの違いは、ジルテックはセチリジンのL体とD体を50%
づつ含んでいるのに対し、ザイザルはL体しか含まないのが主な違いとのこと。
セチリジンのD体は眠気の原因になり、抗ヒスタミン効果もない。
セチリジンのL体は脳内に移行しないので「理論的には」眠気が起こらず、抗ヒスタミン効果がある。
アレグラやクラリチンにはない「眠気を催すことがあるので・・」の注意文言がザイザルにある
理由は日本で臨床試験を行なっていない項目があるので、それに関しては海外の添付文書
を組み合わせているのが理由とのこと。
おねぇ系薬剤師の独り言「スーパージルテック、その名はザイザル!!!」
薬剤師の方のザイザルに関する記事。ザイザルはこの名称になる前に仮称で
「スーパージルテック」の名前がついていたとのこと。英語ではXYZALと書いて、XYZが
最終兵器を意味しているとのこと。それだけ製薬会社が自信を持って出した薬という
ことだろう。
ちなみにこのサイトはコメントがかなり付いているので、コメントを読んでいるだけで
いろいろと参考になる。抗アレルギー薬は花粉が飛ぶ2週間前に飲むとよいとか、
特定の薬の効きが悪いときは、それを医者に告げて薬を変えてもらうとよいとか。
コメントのレスによると、同じく眠気の少ない花粉症対策薬のクラリチンよりも効きがよい
との声も多くあるようだ。この方によると、アレグラは効果が弱く、ザイザルやアレロックは
効果が強い薬とのこと。
芳仁皮膚科医院院長 張賢二のブログ「ザイザル」
皮膚科の医師がザイザルに関して複数記事を書いている。
眠気に関しては、半年使った限りでは患者の8~9割には発現しないとのこと。MRの人の
話でも副作用は眠気を訴える人がいるくらいで、他に主だったものは特にないとのこと。
新薬なので2週間しか処方できないところは欠点として挙げている。
おしえてgoo「ザイザルの作用と副作用」
質問サイトでのザイザルに関する情報いろいろ。質問者によるとザイザルは眠いとのこと。
回答者は日経トレンディのザイザルとジルテックの違いの説明に関する記事や、
ジルテックとザイザルの構造の違いなどに関して説明をしている。
ヤフー知恵袋「ザイザル5ml錠について」
質問サイトでのザイザルの副作用に関する質問。副作用は少ないが眠気は出るとの発言
が複数あり。
日経メディカルオンライン「ザイザル:光学分割でジルテックの薬効を増強」
慈恵医大病院の薬剤師の方のザイザルの解説記事。ちょっと専門用語が多い。
医薬品医療機器総合機構「ザイザル錠 5mg 製造販売承認申請書添付資料」(PDF)
黒塗りが多いのが気になるところではあるが、政府機関の医薬品医療機器総合機構に
置いてある資料なので一次情報として信頼はできるかと。126ページもあるので、ひと通り
目を通した上で、特に有用そうな部分を記載しておく。
26ページ目:海外の臨床試験の結果ではザイザルとプラセボ(ニセの薬)で運転操作に
及ぼす影響に差が現れなかった。
35ページ目:ケトチフェン(眠気が強い第二世代抗ヒスタミン薬ザジテンの成分)とセチリジンの
効果比較。TNSS(total nasal symptom score)という、鼻の痒み、鼻漏、鼻閉、くしゃみの
4つの症状を0~3点(0=no symptom, 1=mild, 2=moderate, 3=severe)で患者に評価してもらい
合計する鼻症状スコアというものを使ってアレルギー性鼻炎に対する比較を行った結果、
ケトチフェンのほうが効果が高いことが示された。ちなみにセチリジンはザイザルではなく
ジルテックの成分だが、薬の強さ自体はジルテックとザイザルは同じなので、つまりは
ザイザルよりもザジテンの方が強い薬という結論になる。
88ページ目: ザイザルがプラセボと比べて傾眠、無力症/疲労、口内乾燥の副作用が
統計的に有意に高かったとの記載。つまりザイザルに眠気の副作用はあるということ。
91ページ目でも同様の記載。26ページの結果と矛盾しているようにも見えるが、運転操作に
影響を及ぼすほどではないにせよ、眠気はあるということなのだろう。
118ページ目: 傾眠、つまり眠気の副作用について。海外でのザイザル投与による眠気の
副作用の発生頻度は、プラセボより高く、ジルテックとは同じくらいだったとのこと。
理論上はザイザルはジルテックより眠気が少ないはずだが、有意差が出るほどではない
ということか。
119ページ目:こちらは眠気ではなく、自動車運転や機械操作に関する認知機能の低下に
関する副作用の調査。ザイザルもジルテックもプラセボと有意差はなかったとのこと。
121ページ目:ザイザルのベネフィットとリスクのまとめ。この長い資料の結論を知りたい人は
とりあえずこのページを見ればよいかと。
スズケン「アレルギー性疾患治療薬レボセチリジン塩酸塩」
抗ヒスタミン薬の鎮静作用を評価した102編の論文を横断調査した論文の紹介が興味深い。
上記記事のソース元となっている論文はこれ。
Sedation and antihistamines: an update. Review of inter-drug differences using proportional impairment ratios
サイトにあった画像の英語表記の成分名を薬剤名に置き換えたものを下記に載せる。
なんとザイザルはアレグラよりも鎮静作用(つまり眠気の副作用)が少ないとの結果に。
本当か?各薬剤の詳細情報が記載されているインタビューフォームの結果とも異なるし、
他の論文の結果、医療関係者の評価とも異なるし、この結果に関しては疑問の残るところだ。
そもそも眠気が少ないと言われるクラリチンよりもジルテック、アレロックの方が鎮静作用が
少ないという結果は特に奇妙なところ。この横断調査の論文の信頼性に関しては私は
評価できないが、一応こういうソースもあるということで載せておく。
ちなみに各薬剤の添付文書での眠気の副作用の割合は下記のようになっている。
クラリチンの副作用 眠気:0.7%(52件/7049例中)
アレジオンの副作用 眠気:1.2%(102件/8443例中)
タリオンの副作用 眠気:1.3%(59件/4453例中)
エバステルの副作用 眠気:1.7%(146/8349例中)
アレグラの副作用 眠気:2.3%(158件/6809例中)
ザイザルの副作用 眠気:5.2%(67件/1292例中)
ジルテックの副作用 眠気:6.0%(84例/1396例中)
アレロックの副作用 眠気:7.0%(674件/9620例中)
つまり何が言いたいのかというと、ソースによって結論が異なることは往々にしてあるので、
上記の図をそのまま鵜呑みにしてはいけないよという話。複数の医療関係者の記載を見る
限りは、添付文書に書かれている眠気の副作用割合の方が彼らの実感に近いと思われる。